今なら貞子はクラウド保存され、スマホから出てくる?──ホラーの醍醐味を製作目線で考える
でも現在、VHSテープは過去の遺物となり、テレビを家に置く人も少なくなったはずだ。ならば今の貞子はクラウド的空間に保存されて、スマホの画面から現れるのだろうか。書きながらそのシーンを思い浮かべたけれど、なんだか怖くない。ついでに妄想する。無理な姿勢で階段を駆け下りようとしたリーガンや佐伯伽椰子は、手足が絡んで転んだら照れ笑いするのだろうか。天井の梁(はり)から逆さにぶら下がろうとして、床に激突した霊だっていたかもしれない。
霊たちも大変だ。たまにはお疲れさまとねぎらいたい。それがラストシーンのホラー映画。まあどう考えてもヒットしないだろうな。
『リング』
©1998 「リング」「らせん」製作
委員会
監督/中田秀夫
出演/松嶋菜々子、真田広之、中谷美紀
<本誌2020年3月17日号掲載>
【関連記事】『竜馬暗殺』は社会の支持を失った左翼運動へのレクイエム

アマゾンに飛びます
2020年7月28日号(7月21日発売)は「コロナで変わる日本的経営」特集。永遠のテーマ「生産性の低さ」の原因は何か? 危機下で露呈した日本企業の成長を妨げる7大問題とは? 克服すべき課題と、その先にある復活への道筋を探る。
日本軍の捕虜虐待を描きながら「反日映画」にされなかった『太陽の帝国』の不思議 2025.09.06
抽象的で理解の難しい『2001年宇宙の旅』が世に残り続ける理由 2025.08.21
権力vs国民の知る権利、『ペンタゴン・ペーパーズ』でスピルバーグが問うたもの 2025.07.08
40年ぶりに観返した『狼たちの午後』はやはりリアルな傑作だった 2025.06.21