コラム

米中貿易戦争が起きたら、漁夫の利を獲りに行け

2018年04月13日(金)19時25分

そして、そうすることが米中貿易戦争の終結を早めることになる。米中が「俺たちがケンカをすることで得をしているのは日本とドイツか」と気づけば貿易戦争の無益さを悟るであろう。

──と思っていたら、数日前に新たな展開があった。4月10日に博鰲アジアフォーラムの開幕式で演壇に立った習近平国家主席がさらなる市場開放を進めることを表明したのである。銀行業、証券業、保険業、自動車産業における外資の出資比率に対する規制を緩和する、外資参入分野に関するネガティブ・リストの改訂を行う、知的財産権の保護と輸入の拡大に努める、自動車の輸入関税の引き下げを実施する、といった内容だ。

明らかにUSTRの指摘を意識した内容である。習主席の言葉からは、アメリカの要求を受け入れることで貿易戦争を回避したいとのメッセージが読み取れる。と同時に、これは中国自身が進めようとしていた経済開放のプログラムの実施を早めたものでもある。

自動車産業などでの出資比率規制は、国内企業を育てたいという保護主義の発想に基づいて長らく維持されてきた。しかし長く手厚すぎる保護は、国内企業をかえって甘やかす結果になった。

保護を外して外国企業との競争にさらすことは、かえって中国企業の成長を促す効果を持ちうるし、国内市場が拡大する効果も期待できる。表面的にはアメリカの圧力に屈する格好になるが、これを機に一層の開放を進めることは、むしろ中国の経済成長に間違いなくプラスに働くはずである。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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