コラム

「民主主義は暗闇の中で死に絶える」...「経営の死」の後に大手メディアが迎えた「報道の死」

2026年02月06日(金)17時40分

「世に出ることのない物語への悲しみがまた波のように押し寄せてきた」

「今朝ノートを手に取った。最近の取材で書き留めたメモがびっしり詰まっている。もう世に出ることのない物語への悲しみがまた波のように押し寄せてきた。現在、仕事を探している。粘り強く、共感力のある記者を必要としている方がいればお知らせください」(ジョンソン記者)


ワシントン・ポストは全従業員の約3分の1にあたる数百人規模を解雇した。スポーツ、地方ニュース、国際報道部門が深刻な打撃を受けた。マーティン・バロン元編集局長は「ワシントン・ポストの歴史の中で最も暗い日の一つ」と救いの手を差し伸べなかったベゾス氏を批判した。

「民主主義は暗闇の中で死に絶える」をモットーに国家の最高機密文書ペンタゴン・ペーパーズを報道し、ウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン米大統領の陰謀を暴いたワシントン・ポストは12年前の「経営の死」に続いて「報道の死」を迎えたのか。

ベゾス氏から報道の自由を支持する精神は微塵も感じられない

昨年の米大統領選でワシントン・ポストは候補者推薦を見送った。1988年の大統領選挙以来、ワシントン・ポストは民主党候補者を推薦してきた。編集委員会はカマラ・ハリス氏を支持していたが、ドナルド・トランプ現大統領の報復を恐れるベゾス氏の命令で阻止されたとされる。

かつて報道の自由を支持したベゾス氏から「もはやその精神は微塵も感じられない」(バロン元編集局長)。AI(人工知能)の台頭でオンラインのトラフィックは急落、マット・マレー編集局長は「存続するだけでなく繁栄するにはビジネスモデルを再発明する必要がある」という。

報道は警察官や消防士、医師と同じように社会に不可欠な社会インフラだ。しかし報道には金がかかる。国際報道だとなおさらだ。やりがいや価値観をいくら強調しても解決しない。権力から独立した報道をどう維持していくのか報道に携わる1人ひとりが命懸けで考える必要がある。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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