コラム

ウクライナ戦争に金正恩が「暴風軍団」を派遣...北朝鮮とロシアの接近に中国・習近平が苛立つワケ

2024年10月26日(土)12時11分

東アジアの地政学を複雑化させることを恐れる中国

CSISの衛星画像の分析によれば、北朝鮮とロシア間の鉄道輸送はかつてないほど活発だ。「ロシアの戦争を支援することで北朝鮮の軍部は短距離弾道ミサイルや軍需品の有効性について貴重な経験が得られる。120万人の軍隊も朝鮮戦争以来の戦闘経験を積むことができる」(チャ氏)

金正恩は大陸間弾道ミサイルや原子力潜水艦の戦力構築を目指す。北朝鮮の核兵器開発に反対してきたプーチンだが、ウクライナ戦争をきっかけにした軍事協力で「国防・技術分野における協力がさらに発展する可能性を排除しない」との方針に転換している。

北京は、中国の影響力を低下させる北朝鮮の動きが東アジア地域における米国とその同盟国のより強力な対応を誘発し、ひいては中国の核心的利益である台湾と南シナ海の地政学を複雑化することを恐れている。さらに米国が地域の集団保障体制を構築することにも不安を抱いている。

習主席は深刻なジレンマを抱えている。米国の影響力は排除したい。ロシアのエネルギーは喉から手が出るぐらいほしい。数少ない「友人」のプーチンがウクライナ戦争で全面敗北するのは何が何でも避けたい。しかし、プーチンと金正恩の暴走だけは御免被りたいのだ。

最後の1点で西側と中国の利害は一致しているのだが......。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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