コラム

竜巻に巻き込まれ、地中海で豪華ヨットが沈没...「英国のビル・ゲイツ」も行方不明

2024年08月20日(火)19時08分

竜巻性ウォータースパウトの風速は秒速44メートル超

水しぶきが水を吸い上げているように見えるが、実際には漏斗の中に見える水のほとんどは結露によって形成された水滴である。暖かく湿った空気の供給が途絶えたり、陸地上空に移動したり、風向や風速の急変によって循環が乱れたりすると漏斗は狭くなり、やがて消滅する。

沈没現場近くのパレルモの日の出は午前6時26分。ウォータースパウトが発生した午前5時ごろの気温は摂氏25度だった。大きな破壊力を持つ竜巻性ウォータースパウトの風速は秒速44メートルを超えることもあり、ボートやヨットの航行には極めて危険である。

英紙フィナンシャル・タイムズ(8月19日)は「近代的な設備を整えた大型ヨットが衝突事故ではなく悪天候のためアッという間に沈没したことは、異常気象が頻発し、その強度が増すにつれ、海洋の安全性に対する懸念が高まっていることを浮き彫りにしている」と報じている。

スペイン・バレアレス諸島のイビサ島とフォルメンテラ島でも8月14日、最大で秒速28メートルの暴風雨が吹き荒れ、数十隻のヨットが嵐に巻き込まれ、一部は転覆し、岩に乗り上げた。原因は「ダーナ」と呼ばれる雷雨だった。異常気象の頻発と地球温暖化は決して無縁ではない。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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