コラム

夢と消えた「中国の60兆ドル金融市場」 米中対立で「儲け話が暗転」...国家安全保障を最優先する習近平

2023年08月31日(木)17時27分

習氏「金融安全保障は国家安全保障の重要な一部」

香港ウオッチのパターソン氏によると、習氏は17年、中国共産党中央政治局メンバーの勉強会で「金融安全保障は国家安全保障の重要な一部である」と強調した。パターソン氏は早くから「中国共産党の国家安全保障の概念は広範囲に及ぶ。中国が無条件で金融市場を開放すると信じている強気の投資家はもう一度考えるべきだ」と注意を呼びかけていた。

米ブルームバーグは今年5月、「中国の金融開放から3年以上が経過し、ウォール街大手にとって60兆ドル市場からの大儲けの夢がこれまで以上につかみどころがないことが明らかになりつつある」と指摘。米国のJPモルガン、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレー4行の中国へのエクスポージャーは昨年、前年比で16%も減った。

習氏によるテック企業の規制強化、不動産バブル崩壊、米中対立で、フィナンシャル・タイムズ紙のケイ・ウィギンス記者は「米国投資銀行にとって、中国がより厄介な存在になりつつある。中国企業の株式をオフショアで売却することは、かつては儲け話であったが、もはやそうではない」と強調する。マネーの世界も2つに分断し始めている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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