コラム

ウクライナ軍が7集落を解放...プーチンは「敵は目的を達成できていない」と強がるだけの「裸の王様」に

2023年06月13日(火)18時37分

「反攻は確実に始まった。ウクライナ軍が戦略的予備軍を使用していることから証明される。次に戦闘のどの時点でもウクライナ軍は目的を達成できていない。これも明白だ。戦闘は5日間、激しく行われている。昨日(8日)、一昨日(7日)、その前の2日間(5、6日)、戦闘は非常に激しく、敵はどの地域でも成功を収めなかった」(プーチン)

さらなる動員を念頭に置くプーチン

プーチンは「これらすべてはわが軍の兵士の勇気と英雄主義、正しい組織、正しい部隊の指揮、ロシア製の兵器、特に近代兵器の高い有効性によって達成されたものだ。防衛産業と軍産複合体は急速に発展しており、防衛産業が直面するすべての課題は間違いなく達成されると確信している。現代兵器の生産は集中的に増加している」と兵器近代化の努力を強調した。

「ここ数日、ウクライナ政権軍の大幅な損失が確認されている。攻撃的な作戦では攻撃と防御の損失の割合は約3対1であることはよく知られている。これは古典的な比率だ。しかし今回のウクライナ軍の反攻では古典的な数字よりかなり高い。今、この数字をあげることはしないが、ウクライナ政権軍の損失は際立っている」と胸を張ってみせた。

「しかしキーウ政権軍の攻勢の可能性はまだ残っている。ロシア軍事指導部はこの状況を現実的に捉え、こうした現実を近い将来のわれわれの行動の基礎とすると推測する」。プーチンの頭にあるのは間違いなくさらなる動員だ。ウクライナの軍事情報報告書によると、戦時体制下のロシアは動員を連続して発動し、総勢200万人の強力な軍隊を構築することを計画している。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は10日「ウクライナでは適切な反攻・防御行動がとられている。どのような段階なのか詳しくは申し上げない。すべての人が今、前向きなムードにある」と述べるにとどめた。ウクライナ軍は今回の大規模反攻でできる限り領土を奪還した後は西側の先端兵器で抑止力の構築に専念するとみられている。

「裸の王様」と化したプーチンの強がりはいつまでも通用しない。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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