コラム

9日にプーチン勝利宣言? ゼレンスキー「それでもマリウポリは絶対に陥落しない」

2022年05月07日(土)16時06分

ロシアに制裁を科しているのは日米欧など39カ国だけ

チャタムハウスの集計ではロシアに制裁を科しているのは日米欧など39カ国にとどまる。中国、インドなどアジア、中東・アフリカ諸国の大半がロシアとの資源・エネルギーや武器の取引を続けている。ウクライナ国民には同情するものの、自国の経済や国防・安全保障は犠牲にできないというわけだ。

ウクライナがここまで頑張れるとはみんな思っていなかったという声に対してゼレンスキー氏は「これはテロと同じだ。それを許容する人は誰もいないだろう」と答えた。「私の人生は本当に波乱万丈だが、終わりが来るわけではない。私たちの前には明るい未来があると信じている」と言い切った。

「ウクライナで起きていることは欧州と世界のすべての人にとって重要なことだ。これは18世紀の戦争に逆戻りした全面的な侵略だ。ウクライナに侵略したロシアの非道さはすべての国際条約や人権への軽蔑を示している。ロシアは核保有国で核の威嚇によって何十年も先送りできる、戦争犯罪の責任を負わされることはないと考えている」

「核ミサイルがどれくらいの時間で欧州の首都を攻撃できるかを公然と語り、イギリスやアイルランドを洗い流すためにどうやって海で核爆発を起こすかシミュレーションを示した。ロシアはどんな国家をも『核の灰』にする能力があると自慢している。何をしても許される免罪符がロシアには与えられていると信じているのだ」とゼレンスキー氏は吐き捨てた。

戦争やロシア海軍による海上封鎖で、ヒマワリの種、トウモロコシなどウクライナからの穀物供給は大幅に不足している。食糧危機は北アフリカや中東から徐々に世界の他地域に広がり、低所得者や中所得者を直撃、政治的な混乱を引き起こす恐れが膨らむ。

「まだ終わりが見えない。ロシア側に終わらせようという意思も感じられない」とゼレンスキー氏は表情を引き締めた。戦争が長期化すれば米欧の結束が綻ぶ恐れが膨らむ。プーチン氏の狙いはそこに絞られている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円が対ドルで5円上昇、介入観測 神田財務官「ノーコ

ビジネス

神田財務官、為替介入観測に「いまはノーコメント」

ワールド

北朝鮮が米国批判、ウクライナへの長距離ミサイル供与

ワールド

北朝鮮、宇宙偵察能力強化任務「予定通り遂行」と表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story