コラム

<COP26きょう開幕>「2025年ネットゼロ」「30年ネットネガティブ」を目指すスコットランドの酪農家に学ぶ逆転の発想

2021年10月31日(日)11時27分

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ノリッシュ・スコットランドのピート・リッチー代表(同)

太陽光発電やバイオマス技術を利用して瓶詰め工場のCO2排出量を70%削減し、戸別配達に3台の電動バンを使う──英BBC放送の「未来の食料」部門で食料・農業賞に輝き、有名コーヒー店や学校にも牛乳を納入するようになった。公正で健康かつ持続可能な食のシステムを目指す慈善団体ノリッシュ・スコットランドのピート・リッチー代表はこう語る。

「CO2を排出しない電動バンを使うことで消費者の受けが良くなる。スコットランドでは電気自動車を購入する際、無利子のローンが利用できる。これでディーゼル車を使って配達するよりも電動バンを使った方がコストを低く抑えられる。また太陽光発電を利用することでエネルギー代も安くなる」

大量生産・大量消費の巨大サプライチェーンの中で、生産者は回し車のハツカネズミと化す。「底辺への競争」という悪夢のサイクルから抜け出すためには地域の消費者と直接つながる必要がある。「モスギール有機酪農場」の場合、有機農法で温暖化対策と環境保護を実現するというストーリーで絆を築き、生産者も消費者も変わることができた。

一方、日本は「福島の記憶が生々しく原発をフルに再稼働できない。エネルギー安全保障上、石炭火力発電という選択肢は放棄できない」「日本が石炭火力発電のインフラ輸出から撤退すれば中国を喜ばすだけ」というストーリーをいつまで語るつもりなのか。COP26での岸田首相の発言に期待したいところだが......。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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