コラム

なぜ環境活動家は一見無関係の名画を標的にするのか? 彼らなりの論理とは

2022年11月23日(水)16時24分

ミネラルウオーターには価値がある?

かつて思想家の吉本隆明氏が、ミネラルウオーターが販売されたことに衝撃を受けたのは有名な話である。ただの水にすぎないミネラルウオーターに生じた高い付加価値は、単なる企業ブランドと見なすこともできるし、見方を変えれば自然環境を維持するコストであり、製造企業は利益の一部を当該活動に充当すべきとも解釈できる。

一部のマルクス主義者は、生産関係の一部として天然資源を社会主義的に管理することで、地球環境と経済活動を両立できると主張する。結局のところ、天然資源を社会主義的に管理しようが、市場メカニズムを通じて管理しようが、そのコストは何らかの形で負担しなければならない。

このまま資源の浪費が進めば、絶対量に限りがある以上、奪い合いになるのは確実である。ウクライナ侵攻からも分かるように究極の奪い合いは戦争であり、経済力で買い占めることも類似行為といってよい。全世界的なインフレの進行は、争奪戦が既に始まっていることを示唆している。

絵画にスープをかけても問題は解決しないが、一連のコストを何らかの形で共同負担する仕組みが必要なのは間違いない。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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