コラム

日本でまともな「ベンチャー企業」が育たない理由...本当の問題は資金調達ではない

2022年10月25日(火)18時10分

しかしながら、この政策には実効性という点で大きな問題がある。その理由は、大企業が税制優遇だけでベンチャーを積極的に買収する可能性は低いからである。

安倍政権時代、政府は法人税の減税を繰り返し、既にかなりの低税率となっている。加えて、日本には以前から租税特別措置(租特)と呼ばれる優遇税制があり、多くの大企業がこの制度を利用して節税している。現実問題として、大企業は税金をあまり払っていないので、減税策を提示されても、魅力的には感じないだろう。

むしろ、旧態依然とした経営の刷新を目的に政府が進める「ガバナンス強化策」において、ベンチャー企業活用を促したほうが圧倒的に効果が高いと考えられる。欧米各国でも、全ての大企業経営者が勇猛果敢にベンチャー企業の新技術を活用しているわけではない。経営者に対して、現状維持を許さない市場環境があるからこそ、ベンチャー企業の買収や新技術の採用が進むという現実を、理解しておく必要がある。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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