コラム

米経済の立て直しには「根本治療」が必要だ

2024年08月01日(木)16時15分

1つには株主たちが配当増を性急に要求して長期的視野からの投資を許さなかったこと。アメリカの企業は銀行ではなく、株式に資金を依存しているので、株主の要求に弱い。そのためにコダック社は、デジタルカメラ台頭に対応できず、2012年に倒産している。

もう1つは労働組合が過大な賃上げ、企業年金の引き上げを要求し続けて企業の投資余力を奪うこと。組合幹部はこれで居座り、集めた組合費をコネで貸し付け、不法な利益を上げる。


また、バンスの名著『ヒルビリー・エレジー』が描くように、中西部の白人労働者たちは職業訓練を受けてIT分野への転職を試みる、あるいは発展著しいテキサス、アリゾナなどの新たな工業地域に移住することを考えない。

こうした構造的問題は、選挙向きではない。新政権がじっくり検討し、改革するべきものだ。選挙はポピュリズム合戦になるだろうが、トランプの復讐劇はもう見飽きた。これからの3カ月は、アメリカの未来を考える新作ドラマを見たいものだ。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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