コラム

韓国代表がWBCで「惨敗」したのには理由がある

2026年03月19日(木)20時18分

外国人依存で若手投手育たず

韓国プロ野球リーグ(KBO)が、元韓国国籍保有者以外の外国人に門を開いたのは1998年。アジア通貨危機の真っただ中、経営の危機に直面したKBOはリーグ活性化のために外国人選手の起用を認めた。その後、08年北京五輪の優勝と09年WBCの準優勝で野球ブームが巻き起こり、加盟チームは当初の6球団から10球団に増加した。チーム数とそれに伴う試合数の増加で起こったのは、深刻な投手不足だった。高校野球のチーム数が約3800もある日本とは異なり、野球がエリートスポーツの伝統を持つ韓国では、高校のチームは100以下。元々選手層が限られていた。

だから、各球団は外国人枠の多くを投手に振り分け、これに経済成長が輪をかけた。選手年俸が上昇し、実績がある外国人選手が来るようになり、各チームのエースの座に君臨した。この成功を見て、利益至上主義の各球団は若手選手育成よりも即戦力の外国人投手への依存を深めた。

とはいえ外国人枠は限られていたから、リーグ全体の投手力は低下し、「打高投低」状態がもたらされた。多くの得点が入るスリリングな試合展開により観客数は増加し、25年には1200万人を超えた。ビジネスとしては成功に違いない。

こうしてみると、韓国プロ野球の外国人投手への依存構造が、実はこの国の経済成長の過程と連動していることがわかる。経済成長と少子高齢化が進む中、賃金上昇と人手不足が同時進行し、利益至上主義の企業は新卒の育成よりも、即戦力の外国人への依存を選択する。そして外国人が社会のエリート層を占めるようになった時、はじき出されるのはベテランではなく、若手だった。成長の機会を失った彼らは社会に使い捨てられ、社会への不満を高めていく。

韓国社会に連動した構造的問題が原因だとすると、韓国野球が低迷期を脱するのはそんなに簡単ではないかもしれない。

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プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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