コラム

韓国「巨大与党」誕生の意味

2020年04月20日(月)10時40分

そして文在寅政権の国会議員選挙での大勝は、日本をはじめとする韓国の周辺国にも同じ問題を投げかけている。これまでの韓国では政権末期になると、大統領はレイムダック化し、だから周辺国はその活動に深刻な懸念を払わず、「次の政権」に期待を賭ける事が出来た。しかしながら、国会と与党内部で大きな力を獲得した文在寅政権は少なくとも当面は、より大きなリーダーシップを以て韓国を率いていく事になる。その影響力は次期政権にも引き継がれる可能性があり、だとすれば我々と文在寅やそれをとりまく韓国の進歩派との付き合いは、これまでの大統領たちのそれらよりも遥かに長いものになる可能性がある。「韓国にも『反日種族主義』がベストセラーになった事に表れるような、親日的な保守派がいる。だから彼らを信じていれば大丈夫だ」というような、希望観測的で自慰的な言説が通用するような状況では最早ない。

だとすると我々は「覚悟を決めて」、強大化した文在寅政権と彼が率いる進歩派がヘゲモニーを持つ韓国と向かい合わねばならない。彼らが韓国をどのように導き、そして日本とどのような関係を築こうとしているのかを、きちんと問いかけて行かねばならない。文在寅政権と韓国の進歩派同様、我々もまた長期的な戦略を以て韓国と向かい合うべき時が来ている、のである。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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