コラム

オックスフォード大学が世界一の理由を知ってる?

2018年03月01日(木)15時00分

世界トップクラスの名門大学ながら、オックスフォード大学の素顔は実はよく知られていない zodebala/iStock.

<世界大学ランキング2年連続1位に輝き、数多くの実力者を輩出する英オックスフォード大学は筆者コリン・ジョイスの出身大学でもある。その実力を解き明かすために特に興味深い点を紹介すると......>

僕はこの12カ月の大半を、新著『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)の執筆に費やしてきた。この本は主に僕のオックスフォード大学での経験について書いたものだけど、「なぜオックスフォードが世界一の大学なのか」に対するある種の答えのようなものを提示できれば、とも思っている。きっと興味を持ってもらえると思う事実をいくつか紹介しよう。

サッカーFAカップは世界で最も歴史あるイングランドのサッカー大会。オックスフォード大学は過去に1度優勝経験があり、つまり(イングランド・プレミアリーグの)レスターシティーFCや(オックスフォードを本拠地とするプロチーム)オックスフォード・ユナイテッドFC、そしてケンブリッジ大学に勝るということになる。オックスフォード大学は3回準優勝もしているが、最後に決勝戦に進出したのは138年前だ。

とはいえ、そんなFAカップもオックスフォード大学対ケンブリッジ大学の「ザ・ボート・レース」ほどの歴史はない。2度の世界大戦で中止されたときを除けばこのレースは1856年以降、毎年テムズ川で開催されているが、最初の単発レースは1829年に行われている。

オックスフォードの学生は38のカレッジのいずれかに所属し、各カレッジを構成する現役学生はほんの数百人であるにもかかわらず、それぞれのカレッジは強烈な個性を放つ。学生も卒業生も、大学より何よりもまずカレッジを自分の所属とみなす。学生はカレッジグッズのマフラーやネクタイ、スウェットを身に付ける......でも「オックスフォード大学」ロゴ入りグッズを身に付けることはまずないだろう。

オックスフォードで人文系科目を専攻する学生は大概、ほとんど講義を取らず、ほとんど講義に出席もしない(歴史専攻の3年間の大学生活で、僕は講義という「教育」を100時間も受けていない)。その代わりに、学生はほとんどの時間を、専門のチューターとの週一、1時間の個別指導「チュートリアル」に向けた準備の独学に費やす。だからオックスフォードの学生は知識を「導かれる」というより「案内」されるのだ。

卒業生で歴代首相や有名人は数知れず

オックスフォードには正式な創設年がないが、(イタリアのボローニャ大学に次ぎ)世界で2番目に古い大学とされている。11世紀から学問の中心であり続けたが、ヘンリー2世がイギリスの学者にフランスで学ぶことを禁じ、彼らがオックスフォードに流れ込んだ1167年以降は、急激な成長を遂げた。

イギリスの大学生にとって、実家暮らしはかなり稀なケースだ。ほとんどのイギリスの若者にとって、親元を離れるということが大学に行くことの「核心」みたいなものだったりする。

大学の寮に門限はない。学生には専用のバーもあり、大抵は学生組合が経営している。オックスフォードでは、それぞれのカレッジの学生専用のバーもある(僕が最初に日本に来たとき、大学生の寮には門限があり大学にはバーがないと知って、あまりの違いに驚いた)。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米、イランのフーシ派支援に警告 国防長官「結

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story