コラム

予想外の英保守党勝利の裏事情

2015年05月12日(火)11時17分

 イギリス総選挙の結果には、あらゆる政治評論家が驚かされている。中立的な専門家で保守党の単独過半数を予想していた人などいなかったと思うが、結果はまさに保守党がギリギリながら単独過半数を獲得して勝利した。

 僕の不正確な事前予測は大目に見ていただきたい。ついでに、今回の選挙はすべてが予測不可能だと僕が言っていたことも思い出してもらいたい。

 キャメロン首相の続投を可能にした理由は3つあると思う。重要度の低い順に挙げてみよう。

 まず、かなり単純だけど、「知らない悪魔より知った悪魔」だったということだ。キャメロンは国民から愛されてもいなければ尊敬されてもいないが、忌み嫌われているわけでもない。労働党のミリバンド党首は個人的な人気としては常にキャメロンを下回っている。だから結局、有権者は(かろうじて)現首相の続行を選んだ。

■経済では「マシなほう」との判断

 2番目の理由は、経済だ。これまでも常に保守党は、経済政策に関していえば「安全なほうの」党だと見られてきた。保守党だって失策はあるし、貧困層に苦境を強いているものの、それでも大概、人々は経済危機の元凶が保守党にあるとは考えない。ここ数カ月で、イギリス経済には改善の兆しが見えだした。たとえば、インフレ率はついに賃金上昇率を下回るようになっている。だから有権者は、保守党の「緊縮」政策は痛みに耐える価値があるのだと(かろうじて)判断した。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ関税、牛肉・コーヒーなどの食品除外 インフ

ワールド

ネタニヤフ氏、パレスチナ国家への反対強調 極右から

ワールド

ロシアとビジネスを行う国に制裁、共和党が法案準備=

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、5万円割り込み足元400
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story