コラム

民主主義をむしばむ「ハイブリッド脅威」──今そこにある見えない戦争

2025年07月25日(金)12時28分
民主主義をむしばむ「ハイブリッド脅威」──今そこにある見えない戦争

metamorworks -shutterstock-

<ニュース、SNS、選挙、ジェンダー、移民──すべてが分断の火種となり、誰かの手で巧妙に操作されているかもしれない>

「ハイブリッド戦」という言葉は、2014年にロシアが従来型の軍事侵攻とは異なる手法でクリミア半島を掌握した際に注目を集めた。その背景には、ゲラシモフ・ドクトリンの発表や、中国での『超限戦』の出版があったこともあり、従来の正規戦に非正規戦を組み合わせた「全領域での戦い」という概念への関心が高まった。

ただし、その後この概念の定義は徐々に拡大・曖昧化し、現在ではかなり広義の意味で用いられている。


ハイブリッド脅威とは何か

ハイブリッド脅威とは、このハイブリッド戦から正規戦の要素を除いたもので、非正規な戦い全般を指し、多くは平時にも実行可能である。具体的には、認知戦、サイバー攻撃、自国技術の国際標準化をめぐる競争、法制度を使った争い、さらにはテロなど多岐にわたる。社会活動のあらゆる側面が武器化されつつあると言ってよいだろう。

なかでも情報戦、認知戦、デジタル影響工作などは近年注目を集める分野であり、日本でもこれらに関する報道が増えている。一方で、これらの話題にばかり関心が集中し、ハイブリッド脅威全体の構造が見えづらくなっているという弊害も生じている。

情報戦や認知戦、デジタル影響工作は、攻撃主体の特定(アトリビューション)やその効果検証が難しく、また他の攻撃と連携することで影響力を拡大する傾向があるため、個別にではなく総合的に捉える姿勢が重要となる。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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