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民主主義をむしばむ「ハイブリッド脅威」──今そこにある見えない戦争
metamorworks -shutterstock-
<ニュース、SNS、選挙、ジェンダー、移民──すべてが分断の火種となり、誰かの手で巧妙に操作されているかもしれない>
「ハイブリッド戦」という言葉は、2014年にロシアが従来型の軍事侵攻とは異なる手法でクリミア半島を掌握した際に注目を集めた。その背景には、ゲラシモフ・ドクトリンの発表や、中国での『超限戦』の出版があったこともあり、従来の正規戦に非正規戦を組み合わせた「全領域での戦い」という概念への関心が高まった。
ただし、その後この概念の定義は徐々に拡大・曖昧化し、現在ではかなり広義の意味で用いられている。
ハイブリッド脅威とは何か
ハイブリッド脅威とは、このハイブリッド戦から正規戦の要素を除いたもので、非正規な戦い全般を指し、多くは平時にも実行可能である。具体的には、認知戦、サイバー攻撃、自国技術の国際標準化をめぐる競争、法制度を使った争い、さらにはテロなど多岐にわたる。社会活動のあらゆる側面が武器化されつつあると言ってよいだろう。
なかでも情報戦、認知戦、デジタル影響工作などは近年注目を集める分野であり、日本でもこれらに関する報道が増えている。一方で、これらの話題にばかり関心が集中し、ハイブリッド脅威全体の構造が見えづらくなっているという弊害も生じている。
情報戦や認知戦、デジタル影響工作は、攻撃主体の特定(アトリビューション)やその効果検証が難しく、また他の攻撃と連携することで影響力を拡大する傾向があるため、個別にではなく総合的に捉える姿勢が重要となる。
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