コラム

イラン人には「信仰がない」が、ダンスという文化はある

2018年08月28日(火)17時30分

たしかに保守的なイスラームではダンスはあまり評判がよろしくない。とくに女性が自分の夫のまえ以外で踊ることは許されないとの主張が一般的だ。しかし、ホジャブリーや彼女を支援するイラン人たちが上手に踊っているようすをみるかぎり、彼ら、彼女たちが「イスラームの教え」を遵守して、ずっと踊らずにいたとはとても思えない。

保守的なイスラーム法学者たちを除く一般のイラン人にとっては、信仰は信仰、文化は文化、娯楽は娯楽と心のなかでは明確にわけられるのだろう。みんながみんな厳密に法学者たちのいっていることを遵守しているわけではないのだ。

そういえば、イランと対立するサウジアラビアでも、イスラーム法学者たちはダンスがイスラーム的に許されないとの立場だが、国王を含め、大半のサウジ人がアルダと呼ばれる伝統的なダンスを楽しんでいるのである。

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プロフィール

保坂修司

日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究顧問。日本中東学会会長。
慶應義塾大学大学院修士課程修了(東洋史専攻)。在クウェート日本大使館・在サウジアラビア日本大使館専門調査員、中東調査会研究員、近畿大学教授、日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター長等を経て、現職。早稲田大学客員上級研究員を兼任。専門はペルシア湾岸地域近現代史、中東メディア論。主な著書に『乞食とイスラーム』(筑摩書房)、『新版 オサマ・ビンラディンの生涯と聖戦』(朝日新聞出版)、『イラク戦争と変貌する中東世界』『サイバー・イスラーム――越境する公共圏』(いずれも山川出版社)、『サウジアラビア――変わりゆく石油王国』『ジハード主義――アルカイダからイスラーム国へ』(いずれも岩波書店)など。

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