中東紛争でLNG供給停滞、アジアは石炭へ回帰
業界幹部によると、アジアの公益事業会社はコストを削減しエネルギー供給を確保するために石炭火力の発電量を拡大している。写真は2019年1月、バングラデシュのダッカで撮影(2026年 ロイター/Mohammad Ponir Hossain)
Sudarshan Varadhan Emily Chow Ariba Shahid
[シンガポール/カラチ 17日 ロイター] - 業界幹部によると、アジアの公益事業会社はコストを削減しエネルギー供給を確保するために石炭火力の発電量を拡大している。米国・イスラエルのイランに対する戦争の影響で、液化天然ガス(LNG)の出荷が停滞し価格高騰が需要を圧迫しているためだ。
アジアのLNGスポット価格はここ4年間で2度目となる大規模な供給ショックで倍になり、3年ぶりの高値を付けた。ホルムズ海峡の通航がほぼ停止し、世界第2位の輸出国カタールが出荷を停止した。
南アジアはバングラデシュが3月に石炭火力発電と石炭火力電力の輸入を拡大した。パキスタンは太陽光発電の追加導入によって、2022年のロシアのウクライナ侵攻後に起きたLNG供給不安による大規模停電の再発を回避できたことを踏まえ、国内電源による発電をさらに拡大する方針だ。レガリ電力相はロイターに対し「LNG発電量の減少に従って、国内産の石炭を利用した発電所のオフピーク時の発電量がこれまでよりも増える」と述べた。
東南アジアはフィリピンが石炭火力発電を増強してLNG発電を縮小している。その一方で、ベトナム電力公社は先週ロイターに対して石炭供給の交渉をしていると述べ、タイは国内最大規模の石炭火力発電所の稼働率を引き上げている。
韓国は石炭火力の出力制限を撤廃し、原子力発電を拡大する計画だ。日本最大の発電会社JERA(ジェラ)は先週ロイターに対して、石炭火力発電を高稼働率で維持するだろうと語った。
エネルギー・シンクタンク「エンバー」のデータによると、世界の大手エネルギー企業がアジアのLNG需要拡大に数十億ドルを投じてきたにもかかわらず、再生可能エネルギーの利用普及によってアジアの発電量に占める天然ガスの割合はこの約10年間減少している。
アナリストや業界関係者は戦争で弾みがついた供給混乱がアジア全域でLNGの需要破壊を引き起こすと予想している。危機が終わった後でさえも、価格が高止まりしたままで不安定な状況が続くと見られるという。
コンサルティング会社ウッドマッケンジーのアナリスト、ルーカス・シュミット氏は「アジアの2026年のLNG需要は今回の紛争のために伸び率が大幅に鈍化するだろう」と述べた。
アジアの発電用石炭の主要指標価格は今月13.2%上昇した。対照的に欧州の石炭先物は14.2%上昇しており、分析会社ケープラーのアナリストの予測によると、欧州連合(EU)は今年の発電用石炭の輸入がガス在庫の低迷のために前年比36%増の3000万トンに達するという。
それでも、アナリストによると、この石炭価格の上昇は世界的なLNG価格の急騰に比べればごくわずかな程度だ。アジアの主要な買い手である中国、インド、日本、韓国の公益事業会社が十分な石炭備蓄を保有し長期契約を通じて供給を確保しているため輸入が現時点で抑制されており、価格の上昇が限定的になるだろうという。
燃料の輸入コスト上昇は再生可能エネルギー導入の妥当性を高めている。
米エネルギー・シンクタンクのエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)のLNG調査リードであるサム・レイノルズ氏は「最近のショックはエネルギー部門の開発計画で輸入化石燃料に依存することに再び異議を唱える形となっており、再生可能エネルギーにより多くの機会を生み出す可能性がある」と述べた。





