情報BOX:イラン戦闘による肥料供給・食料安全保障への影響
2021年10月13日、中国河南省南陽市の小麦畑で肥料の袋を運ぶ農家。REUTERS/Aly Song/File Photo
[ロンドン 16日 ロイター] - 3週目に突入した米国・イスラエルとイランの戦闘は、肥料市場の深刻な混乱を招き、発展途上国の食料安全保障を短期的に脅かすと懸念されている。
この戦闘による肥料価格、貿易、生産への影響を以下にまとめた。
◎なぜホルムズ海峡が肥料供給の鍵なのか
肥料の生産はエネルギー集約的で、原料は天然ガスに大きく依存し、エネルギーが最大で生産コストの70%を占める。
その結果、世界の肥料の多くは中東で生産されており、世界の肥料貿易の3分の1がホルムズ海峡を通っている。
世界の石油と液化天然ガス(LNG)の約20%も同海峡を通過しており、同海峡の閉鎖状態とペルシャ湾岸全域でのミサイル、ドローン攻撃が相まって、この地域のエネルギー施設は生産停止に追い込まれている。
そのため、北半球の農家が植え付け準備を進め、少しの遅れも許されないこの時期に、湾岸その他の肥料工場が閉鎖された。
◎肥料はなぜ食料安全保障に不可欠か
世界の食料の約半分は肥料を使って栽培されているため、長期的な供給混乱は食料の入手可能性に大きな影響を及ぼすとアナリストは説明している。
一部の国では肥料が穀物生産コストの最大で50%を占めている。国連食糧農業機関(FAO)は、低所得国の多くが米国・イスラエルによるイラン攻撃の前から既に食料不安に苦しんでいたと指摘している。
短期的に最も重要な肥料は尿素などの窒素系肥料だ。農家がたとえ1シーズンでも窒素系肥料を施さなければ、収穫が打撃を被る可能性が高い。リン酸塩やカリウムを原料とする他の主要肥料ではこうした傾向は小さい。
尿素の世界市場は、現在の紛争以前から供給不足に見舞われている。欧州は安価なロシア産天然ガスを入手できなくなったことで生産削減を余儀なくされ、中国は国内供給を確保するために尿素を含む肥料の輸出を制限している状態だ。
◎生産を停止、削減した肥料工場
カタール・エナジーはLNG施設への攻撃を受けてガス生産を停止し、世界最大の尿素工場の 生産を停止した。
インドは世界的な尿素市場だが、カタールからのLNG供給が急激に減少したため、3つの尿素工場が生産を削減している。
インドは尿素とリン酸肥料の40%超を中東から購入しており、最近では尿素130万トンの購入で合意した。だが、その一部は期限内に届かない可能性がある。
バングラデシュは五つの肥料工場のうち四つを閉鎖し、オーストラリアのウェスファーマーズは尿素を含む出荷が遅れかねないと警告している。
世界で取引される尿素の8%を供給するエジプトは、イスラエルがエジプトへのガス輸出に不可抗力事態を宣言したため、窒素肥料の生産に苦慮する可能性がある。
ブラジルは尿素をほぼ100%輸入に頼っており、うち半分弱がホルムズ海峡を通過している。
米国の農家は植え付け時期の今、肥料供給が約25%不足している。
スコシアバンクによると、3月は全世界で尿素輸出が約150万トンに減少する見込み。通常は、中国の供給を除いて350万トン、中国からの供給を入れると450万―500万トンだ。
◎肥料価格への影響
アーガスによると、中東の尿素輸出価格はイラン攻撃前の1トン=500ドル弱と比べると、13日時点で約40%上昇して1トン=700ドルを超えた。
米国の肥料価格はイラン攻撃後に最大で32%も上昇した。
アナリストは、戦闘が長引けば尿素などの窒素系肥料の価格はほぼ2倍になる可能性があるとみている。
CRUのアナリスト、クリス・ローソン氏は、中東が圧倒的な市場シェアを持つことを考えると、失われた供給を迅速に補える生産者は存在しないと言及。世界最大の肥料輸出国であるロシアはウクライナのドローン攻撃により供給の混乱に直面しており、中国は十分な生産能力があるものの輸出を制限していると指摘した。





