ニュース速報
ワールド

アングル:米との貿易協定リセットは困難か、違憲判決でも不確実性続く

2026年02月23日(月)06時04分

 米最高裁が相互関税などを違憲と判断したことで、トランプ大統領が他国に関税の脅しをかける能力はとりあえず弱まったことになるが、貿易相手国や企業にとっては不確実性が払拭されたわけではない。写真は相互関税を発表するトランプ大統領。ホワイトハウスで2025年4月撮影(2026年 ロイター/Carlos Barria)

Andrea Shalal

[ワ‌シントン 22日 ロイター] - 米最高裁が相互関税‌などを違憲と判断したことで、トランプ大統領が他国​に関税の脅しをかける能力はとりあえず弱まったことになるが、貿易相手国や企業にとっては不確⁠実性が払拭されたわけではない。

ト​ランプ氏は最高裁判決から数時間後には、1974年通商法122条に基づき150日の期間限定で世界各国からの輸入品に10%の関税を課す大統領令に署名。それから24時間も経たないうちに、新たな関税率を122条で可能な上限の15%に引き上げると述べた。通商法301条に基づき国別の調査を開始する方針も示してい⁠る。

オバマ政権で米通商代表部(USTR)代表を務めたマイケル・フロマン外交問題評議会会長は、最高裁判決の最も大きなインパクトは、貿易分野以外⁠で大統領​が好んで用いる圧力手段や制裁としての関税の脅威や行使を抑制することだと述べた。ただ、徴収した関税の還付方法や、今後導入する関税の内容など、依然不透明なままだと述べた。

昨年の相互関税発表後、米政権は約20件の貿易協定を取りまとめた。これらがどうなるかが貿易相手国・地域の憂慮するところだ。現段階で聞かれる反応は慎重なものになっている。アナ⁠リストからは、トランプ氏の怒りを買うことを懸念し、協定の‌破棄や再交渉を求めることは難しいとの見方が聞かれる。

元USTR高官で、現在はコロンビア大⁠学国⁠際公共政策学部に所属するミリアム・サピロ氏は、トランプ氏は「通商バズーカ」を失い、各国はトランプ政権との新規または進行中の交渉で幾分交渉力を得たのではないかと指摘したが、既存の協定の破棄は予想していないと述べた。

元USTR高官でアジア・ソサイエティ政策研究所上級副所長‌のウェンディ・カトラー氏は、トランプ氏の対応は、貿易相手国を常に​警戒‌状態に置きたいという意向と能⁠力を象徴すると指摘する。

「不​確実性こそが実際の関税以上の強力な追加的テコになるというのが大統領の見立てだ。人々が彼の次の行動を懸念するからだ」と語った。

米シンクタンク、アトランティック・カウンシルで国際経済部門を統括するジョシュ・リプスキー氏は、代替関税や、多様な手段を駆使するというトランプ氏の意向を考える‌と、最高裁判決がトランプ氏の行動に与える影響を予測するのは時期尚早だと指摘した。

それでも、最高裁判決で、トランプ氏の行動が制約された​とカトラー氏ら通商分野の専門家は口を揃え⁠る。122条に基づく代替関税が有効なのは150日間。他の法令に基づく新たな関税は実施までに時間がかかる。国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税徴収を最高裁が無効としたことで、それまで​のような「いつでも、どこでも、どんな理由でも」関税を課すことはできなくなった。カトラー氏は「大統領は最も気に入っている手段を失った。特に外交問題や、貿易とは無関係に他国に対して抱く不満に関して、信憑性のある脅威を示す能力を失った」と語った。  

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:米との貿易協定リセットは困難か、違憲判決

ワールド

トランプ米大統領、代替関税率を10%から15%に引

ビジネス

エヌビディアやソフト大手の決算、AI相場の次の試金

ワールド

焦点:「氷雪経済」の成功例追え、中国がサービス投資
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 2
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面を突き破って侵入する力の正体が明らかに
  • 3
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官が掲げる「新しいスパイの戦い方」
  • 4
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 5
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 6
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 7
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 8
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 9
    「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒…
  • 10
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 6
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 7
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 10
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中