焦点:新興国投資ラッシュに取り残されるインドネシア、強い政策への不信感
写真はインドネシア証券取引所。1月30日、ジャカルタで撮影。Reuters/Ajeng Dinar Ulfiana
Rae Wee Karin Strohecker Stefanno Sulaiman
[シンガポール/ロンドン/ジャカルタ 2日 ロイター] - 東南アジアで最大の人口を抱えているインドネシアの資本市場は、新興国への投資ラッシュから取り残されつつある。プラボウォ政権の経済政策が投資家の熱意を冷やしていることが背景にあり、株価急落は問題の最新の兆候を示しているに過ぎない。
指数算出会社MSCIは1月28日、インドネシア企業の所有構造と取引の透明性に懸念があり、問題が解決しなければフロンティア市場に格下げする方針を発表。それ以来、インドネシア総合株価指数は約12%下落し、時価総額で800億ドル超が消失した。
金融規制当局と証券取引所の幹部5人の辞任や、改革の約束も市場を安定化させるには至らず、通貨インドネシアルピアの下落に拍車がかかっていることも事態を悪化させている。
投資家らはインドネシア市場を敬遠しており、プラボウォ大統領の歳出政策と癒着的な統治がアジア金融危機後の進展を徐々に損なっている。
政府統計によると、インドネシア国債の外国人保有比率は13%超にとどまり、2019年の40%弱から低下した。
資産運用会社ナインティ・ワンの新興国企業債部門の共同責任者、アラン・シオウ氏は「明らかに暗雲が立ち込めている」とし、「問題なのは苦難への階段になっていることだ」と指摘。その上で「最初の数段は常に無害に見える。そして突然、そこに立っている自分に気づいて『ああ、なぜここまで来てしまったのか』と驚くことになる。(昨年9月の)スリ・ムルヤニ財務相の解任が最初の兆候だった」と語った。
LSEGのデータによると、25年の外国人投資家によるインドネシア株の売越額は14兆ルピア(8億3200万ドル)弱相当となり、年間ベースでは20年以来、5年ぶりの大きさとなった。今年1月も7億8300万ドルの売り越しだった。
インドネシア国債の売り越しも25年全体で約64億ドルに達した。
世界の356の新興市場アクティブファンドのポジションを追跡しているコプリー・ファンド・リサーチによると、インドネシア株に投資するファンド数は25年に7.6%、「オーバーウエート」状態のファンドは17%超それぞれ減少し、それぞれ単一国の減少率としては最大になった。
<「株の吊り上げ」>
インドネシアの株式市場で問題となっているのは、ブローカーが「株の吊り上げ」と呼ぶ手法だ。これは関連当事者間の取引で株価を吊り上げる行為を指す。
この問題に対処するため当局は大株主の開示要件拡大と、上場企業の「浮動株比率」(取引可能株式比率)を15%へ倍増することを提案している。
しかし、そのためには企業が株主名簿を整理し、市場に放出する株式数を上積みする必要がある。
投資家らはこの動きを歓迎しているものの、MSCIが納得しないのではないかとの懸念が出ている。MSCIは自社商品でのインドネシア証券の取り扱いを凍結しており、提案に対して公には反応していない。
運用資産額が2兆2000億ドル弱のインベスコの香港拠点の投資ディレクター、ウィリアム・ユエン氏は「企業が実行しなければ、私たちは元の木阿弥になる」とし、「実際の執行と実施についてもう少し具体的な動きを見る必要があると思う。さもなければ、(市場にとっての)懸念材料は残ると思う」と語った。
<弱まる財政規律>
プラボウォ政権の人気を集めている無償学校給食プログラムや、防衛関連の支出プログラムによって膨らんだ財政赤字は、国内総生産(GDP)比で法定上限の3%を突破しかねないとして国債市場を揺さぶり、投資家を不安に陥れている。
インドネシアの財政赤字は世界的に見れば低い水準であるものの、25年のGDP比率2.92%は法定上限に接近。投資家らは政府が財政規律を維持し、アジア通貨危機後に守られてきた法定内の財政赤字を維持することを望んでいる。
ウィリアム・ブレアのポートフォリオマネージャー、ジョニー・チェン氏は「今後数カ月の政策運営次第で状況が大きく変わる」とし、「私たちが慣れ親しんできた財政規律と中央銀行の信頼性が今後も維持されることを示唆する、信頼性の非常に高い政策運営が必要だ」との見解を示した。
インドネシアは巨額の貿易黒字を計上しており、外貨準備高も1565億ドルという十分な水準だ。大規模な資本逃避や、フロンティア市場への突然の格下げが待ち受けている可能性は低いとみられている。
それでも、市場の動向は危険性をはらむ。シンガポールに拠点を置くGAMAアセット・マネジメントのラジーブ・デ・メロ最高投資責任者(CIO)は、インドネシアの通貨・株式・債券を「アンダーウエート」で保有している。メロ氏は「アジア通貨危機後、インドネシアが堅持してきた正統的な政策は肯定的に評価されるべきものだ(中略)新興国株式・債券の投資家も評価していたと思う」とした上で、「しかしながら現在は政策が弱体化し、約束したことが揺らいでいるという認識が広がっている」と警告した。





