シリア難民の帰還、世界的な支援縮小で今後阻まれる恐れ=UNHCR
Emma Farge
[ジュネーブ 8日 ロイター] - 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は8日、昨年12月のアサド旧政権の崩壊以降、300万人以上のシリア人が元いた場所に帰還したとしつつ、世界的な資金援助の減少によって帰還が今後阻まれる恐れがあると警告した。
UNHCRは、これまでに120万人の難民と190万人の国内避難民が自宅に戻ったが、帰還の流れを維持するために一段の支援が必要だと強調した。
「シリアの人々は国家再建の準備ができている。しかし世界が手助けをする準備ができているかどうかが問題なのだ」とUNHCRのフィリッポ・グランディ高等弁務官は述べた。500万人以上の難民がなおシリア国外にとどまっており、多くはヨルダンやレバノンなどの近隣諸国に滞在している。
グランディ氏は先週ジュネーブで開かれた支援国会合で、帰還しつつあるシリア人が再び受け入れ国に戻る逆流のリスクがあると警告。「帰還はかなりの規模で続いているが、より広範な取り組みを強化しなければ逆流のリスクは非常に現実的だ」と述べた。
国連のデータによると、シリアに対する31億9000万ドルの人道支援計画は今年29%しか資金が確保されていない。米国やそのほかの国のように支援国が対外援助を大幅に削減しているからだ。
世界保健機関(WHO)は国家システムが機能するまでに援助資金がなくなり、医療体制に空白が生じる恐れがあるとみている。11月時点で、病院の完全稼働率は58%にとどまり、一部の病院は停電が発生してワクチンのコールドチェーン保管に影響が出ている。





