COP30、米国離脱でも多国間主義の機能を示す=国連事務総長
写真は国連のグテレス事務総長。12月3日、ニューヨークで撮影。REUTERS/Brendan McDermid
Valerie Volcovici
[3日 ロイター] - 国連のグテレス事務総長は3日、ブラジルで11月に開催された国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の最終的な結果は「失望すべきものだった」と嘆いた一方で、米国の不参加と地政学的緊張の高まりの中でも多国間主義が依然機能していることを示したと一定の評価を示した。米ニューヨークでのロイターネクスト会議で語った。
グテレス氏は「COP(30)については複雑な思いを抱いている」とした上で、「一方で米国が離脱して反対運動を展開し、化石燃料産業が明らかに進展を阻もうとする中で合意が成立したことは注目に値する。これは多国間主義が機能している証左だ」と称賛した。
<目標超過への懸念>
ブラジルが議長国を務めたCOP30は2週間を超える交渉の末、地球温暖化対策に取り組む途上国への資金支援を強化する妥協案を採択した。しかし、温暖化を加速させる化石燃料への言及は一切なく、既に合意されていた化石燃料使用の段階的削減方針から後退したとの批判を浴びた。
複数の国は、温室効果ガスの抑制や、脱化石燃料の強化に向けた声明を盛り込まないことに異議を唱えた。
グテレス氏は「より懸念されるのは、科学界の認識が既に一致しているように私たちは現在、(産業革命以前と比べた地球の平均気温上昇が)摂氏1.5度を超える状況にあるということだ」と強調した。2015年に取りまとめた気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」は、各国政府は気温上昇を長期的に1.5度以下に抑える目標を掲げている。
その上で「この(目標と比べた)超過は、私たちが目撃しているあらゆる現象がより頻繁に、より劇的に発生することを意味する」として壊滅的な打撃を与える暴風雨や洪水が起きていることに言及。各国が直ちに温室効果ガス排出量の抑制に努め、今後数年間に大幅な削減に取り組む必要があると訴えた。
<中国は排出力削減加速を>
またグテレス氏は、トランプ米政権がパリ協定からの再離脱を表明したことで、再生可能エネルギーと電気自動車(EV)の両方で世界市場をリードする中国に大きな機会をもたらしたとの見解を示した。
中国が今年表明したのは温室効果ガス排出量をピーク時から最大で10%削減するという低めの目標だったものの、世界最大の温室効果ガス排出国である中国がその目標を上回る成果を上げることを期待していると語った。中国はピーク時の温室効果ガス排出量を公表していない。
グテレス氏は「世界的な視点に立てば、中国が排出量削減を加速させることは不可欠だ。なぜならば中国は(世界の)温室効果ガス排出量の30%を占めているからだ」と語気を強めた。
一方で、先進国に対しては太陽光発言や風力発電を上回る次世代クリーン技術への投資を強化し、中国を追い越す取り組みを進めるように促した。
グテレス氏は「おそらく(次世代クリーン技術の)グリーン水素は、次の市場争いで優位に立つために西側諸国が取り組むべき重要な賭けになる」と力を込めた。
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