ニュース速報
ワールド

ウクライナ、和平合意へ前進の構え 米大統領「意見相違わずか」

2025年11月26日(水)06時33分

ウクライナのゼレンスキー大統領。2025年10月17日、米ホワイトハウスで撮影。REUTERS/Jonathan Ernst

[ ワシントン/キーウ 25日 ロイター] - ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、ロシアとの戦争終結に向けて米国が提示した和平の枠組みを前進させる考えを鮮明にした。さらに和平案の「デリケートな問題」を巡り、トランプ米大統領と協議する用意があるとしたほか、協議には欧州も参加する必要があるという認識を示した。    トランプ大統領はホワイトハウスのイベントで、和平合意に「極めて近づいている」と言明した。ただ、詳細には踏み込まなかった。

その後、ソーシャルメディアへの投稿で「意見の相違はあとわずかだ」と述べた。    ホワイトハウスのレビット報道官は、ウクライナ和平案を巡り「大きな進展」を遂げたとした上で、「解決すべきデリケートな問題がいくつかあるが、解決不可能ではない。ウクライナ、ロシア、米国の間でさらなる協議が必要になるだろう」とXに投稿した。

    ゼレンスキー大統領はこの日、英仏などが主導するウクライナ支援の有志国連合の会合に参加。ロイターが入手した文書によると、ゼレンスキー大統領は演説で、ウクライナ向けの「安心供与部隊」派遣の枠組みを策定し、ロシアが紛争終結に応じる姿勢を示すまでウクライナへの支援を継続するよう、欧州首脳らに訴えた。    さらに「ウクライナの安全保障に関する決定にはウクライナが、欧州の安全保障に関する決定には欧州が関与しなければならないと固く信じている」とし、米国が提示した和平に向けた「枠組みが検討されている。米国とトランプ大統領の個人的な関与の下、共に前進する用意がある」と言明した。

この会合は、フランスのマクロン大統領と英国のスターマー首相が共同議長を務め、ルビオ米国務長官やフォンデアライエン欧州委員長も参加した。米国の高官が参加するのは初めて。

仏当局者によると、この会合では、「安全の保証」を強化するため、米国と有志国連合の間でタスクフォースを設置することを決定した。

フォンデアライエン委員長によると、連合国は対ロ政策の継続を要請。同委員長はXへの投稿で「ロシアが応じる唯一の手段が依然として圧力であることから、平和に向けた信頼できる道筋に取り組む真の意志が現れるまで、われわれは圧力を強め続けるつもりだ」と述べた。

ロシアの凍結資産問題を巡っては、英国のスターマー首相がウクライナへの財政支援提供で欧州連合と「協力する用意がある」と表明した。「これはプーチン大統領に対し、われわれと交渉すべきだと示す最良の方法だ。また戦時中であるかないかを問わず、ウクライナ支援の姿勢を示す最良の方法だ」とした。

フランスのマクロン大統領も、オンライン会合後に演説し、ロシアの凍結資産を活用したウクライナへの財政支援策について、欧州連合(EU)諸国と最終決定すると述べた。さらに、有志国連合は、和平合意が成立次第、ウクライナの安全保障の「保証」をまとめるため、仏英が主導しトルコや米国も密接に関与する作業部会を立ち上げる予定だと明らかにした。

    ウクライナ政府当局者は、米国との協議を受け、ウクライナは和平案の枠組みを原則的に支持していると表明。和平案の最も繊細な部分については、ウクライナのゼレンスキー大統領と米国のトランプ大統領が引き続き協議を進めていくとした。

ウクライナのウメロフ国家安全保障・国防会議書記は、ゼレンスキー大統領がトランプ大統領との合意をまとめるため、今後数日中に米国を訪問する可能性があると発言したが、米国側からはこれまでのところ、ゼレンスキー氏の訪問について確認はない。

トランプ氏は後刻、ソーシャルメディアへの投稿で、トランプ氏自身もウクライナのゼレンスキー大統領やプーチン大統領と近いうちに会談できることを期待しているが、それはこの戦争を終わらせる合意が最終的に成立するか、最終段階にある場合に限られるとした。

ウクライナ側から発せられたメッセージは、トランプ政権による強力な外交的圧力が一定の成果を上げている可能性を示唆したが、ロシアはいかなる合意も自国の最大目標から大きく逸脱させないと強調しており、楽観論も長くは続かない可能性がある。     米国とウクライナは24日、和平案を巡る相違点の縮小に取り組み、スイスのジュネーブで23日に行った協議では、ロシアに大きく譲歩した内容だとしてウクライナや欧州諸国が懸念を示していた米国の当初案を修正することで合意した。

    ロシアのラブロフ外相は和平案の修正について、プーチン大統領とトランプ大統領が8月の首脳会談で合意した「精神と文言」を反映する必要があり、されなければ「状況は根本的に変わる」可能性があると警告した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米HPが3年間で最大6000人削減へ、1株利益見通

ビジネス

米財政赤字、10月は2840億ドルに拡大 関税収入

ビジネス

中国アリババ、7─9月期は増収減益 配送サービス拡

ワールド

米陸軍長官、週内にキーウ訪問へ=ウクライナ大統領府
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中