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焦点:ノルウェー政府系基金、防衛企業の投資解禁か 安保情勢変化で

2025年11月14日(金)17時12分

 8月、ノルウェーのアーレンダールで行われたタウンホールミーティングで、政府系ファンドについて発言するストルテンベルグ財務大臣とノルウェー政府年金基金を運用するノルウェー中央銀行の投資管理部門(NBIM)のタンゲン最高経営責任者。REUTERS/Gwladys Fouche

Gwladys Fouche

[オスロ 13日 ロイター] - ノルウェーは、2兆ドルを運用する世界最大の政府系ファンドの投資倫理指針を見直し、20年以上にわたり禁止してきた大手防衛企業への投資を2027年から解禁する可能性がある。背景にあるのはウクライナ戦争や、欧州諸国に防衛支出拡大を迫るトランプ米大統領の姿勢など、安全保障情勢の変化だ。

議会は4日、2004年に設けた倫理指針の見直しに着手することを可決した。核兵器の部品を製造していることを理由に禁止している14社への投資が解禁される可能性がある。これら企業の時価総額は約1兆ドル。

14社にはロッキード・マーチン、ボーイング、エアバス、BAEシステムズ、サフラン、タレス、BWXテクノロジーズ、ノースロップ・グラマンなどが含まれる。

ノルウェー政府年金基金はESG(環境・社会・企業統治)を重視し、防衛株を敬遠してきた。しかし安全保障情勢の変化により、防衛株は投資リターンの面からも魅力が増している。

1998年から2007年にかけて基金の最高経営責任者(CEO)を務めたクヌート・シェール氏はロイターに対し、「ESGよりも自由の方が重要だ。欧州はロシアの侵略から自らを守らねばならない。兵器に投資しない理由はない」と語り、基金が投資を禁じられているのと同じ企業から、ノルウェー政府が武器を買っているという矛盾点を指摘した。

<投資トレンドを作る基金>

同基金の指針変更は、ESGを志向する他の投資家にも追随を促す可能性がある。基金が2016年、収入の30%を石炭に依存する企業への投資を避ける決定を下したことは、他の投資家に影響を及ぼした。

ノルウェー財務省は7日、指針見直しを担う委員会を設置した。同委員会は2026年10月に提言を行い、提言は27年6月に議会採決にかけられる予定だ。

<ジレンマ>

北大西洋条約機構(NATO)前事務総長であるストルテンベルグ財務相は10月24日の議会で、「そのような(防衛)企業への多額の支払いは倫理的に許容できると考える一方で、同じ企業からずっと少額のリターンを受け取ることは非倫理的だと考える」ことの矛盾を指摘した。

ノルウェーはロッキードから戦闘機を、BAEシステムズからフリゲート艦を購入しているが、政府系基金による両社への投資は20年前に禁じた。指針見直し委員会への負託書において財務省はこの「ジレンマ」を強調し、「以来、両社の武器生産への関与も、安全保障政策の状況も変化した。核兵器は、ノルウェーも加盟しているNATOの抑止戦略の基盤だ」と続けた。

少数与党の労働党政権は、指針変更に対して他の政党から十分な支持を得られそうな情勢だ。

ただ、将来のノルウェー国民を守ることを目的とする基金が、人類の存続を脅かす大量破壊兵器の生産を支援する企業に投資することに反対する声もある。

<倫理的判断に基づく売却を停止>

人口560万人のノルウェーは欧州連合(EU)に加盟しておらず、北極圏でロシアと国境を接する。

2010年から14年まで政府系基金の倫理評議会議長を務めたオラ・メスタッド氏はロイターに対し「倫理指針を再構築し、『われわれは戦前、あるいは戦間期にあるため、これらの兵器(企業への投資)除外について考え方を変えなければならない』と明記できるようにすべきだ」と述べた。

アナリストらは、指針を見直せばノルウェーは倫理的理由に基づきグローバル企業の株売却を決める際、以前よりも慎重になる必要が出てくると指摘する。従来に比べて反発が強まる恐れがあるからだ。議会は先週、そうした売却を一時停止した。

米国務省は9月、パレスチナ自治区ガザやヨルダン川西岸地区でイスラエルが米建機大手キャタピラーの製品を使用していることを理由に、基金が同社株を売却した決定に憂慮を表明した。

ノルウェー政府系基金の資産の約52.4%(1兆ドル)は、米国の株や債券、不動産に投資している。

ロイター
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