マスク氏巨額報酬案巡るテスラ株主投票、否決の公算は乏しい見通し
米電気自動車(EV)テスラの株主は11月6日の年次総会で、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO、写真)に対する最大1兆ドルの報酬案を承認するかどうか投票で決める。9月21日、米アリゾナ州のグレンデールで撮影(2025年 ロイター/Daniel Cole)
Ross Kerber
[29日 ロイター] - 米電気自動車(EV)テスラの株主は11月6日の年次総会で、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)に対する最大1兆ドルの報酬案を承認するかどうか投票で決める。巨額報酬反対派は否決を期待しているが、それが実現する公算は乏しそうだ。
テスラ取締役会は株主に、報酬案を承認するよう要請。ロビン・デンホルム会長は27日、否決されればマスク氏がテスラを去る恐れがあると警告した。
一方、テスラの企業統治に批判的なニューヨーク州幹部や労組関係者は反対票を投じることを呼びかけている。
反対派の一部はこれまでのマスク氏報酬案の承認阻止を試みてきたが、まだ成功していない。例えば2018年の560億ドルに上る報酬案は昨年株主が再承認し、法定での争いがなお継続中だ。
ただ反対派は今回こそ違うだろうとの希望を持つ。
ニューヨーク州のトーマス・ディナポリ会計監査官は「新たな巨額の株式報酬が(テスラの経営への)注意力が散漫だった人物(マスク氏)に再び集中力を与えるという考え方は非論理的で事実にも反している。これは成果ではなく、制限なき権力への報酬だ」と訴えた。
ディナポリ氏は州の年金基金を通じてテスラの330万株、発行済み株式の0.1%の議決権を保有し、マスク氏の経営姿勢に長らく懐疑的な見方をしてきた。
またニューヨーク市のブラッド・ランダー会計監査官も、この報酬案が承認されれば「略奪的な資本主義の時代」が復活すると主張する。同市の年金基金は、昨年4月時点でテスラの約500万株を保有していた。
労働組合の年金基金に助言を提供するSOCインベストメント・グループのエグゼクティブディレクター、テジャル・パテル氏は「テスラは、株主が会社に対して意味のある発言権を持つことを放棄するよう求めているのに等しい」と報酬案承認を求める経営陣を批判した。助言先の労組の年金基金は合計でテスラの1%未満の株を持つ。
大手議決権行使助言会社は報酬案にノーと言うよう勧告しているが、共和党の政策によって株主と企業経営陣の力関係が後者に有利となったことから、報酬案反対派でさえ、否決は厳しい道のりだと認めている。
コロラド大学のアン・リプトン教授は、多くの株主はマスク氏が満足感を維持してほしいと望んでいると指摘。「マスク氏が手がけるxAIやスペースXといった他の事業にも投資機会を得られるかもしれないと考える資産運用会社も、同氏との良好な関係を保ちたいと思うのではないか」と語った。
外部の3大株主のうちブラックロックとステート・ストリートはコメントを拒否し、バンガードは問い合わせに回答がなかった。
テスラは個人投資家の保有比率も相対的に高い。これらの投資家は経営陣を支持する傾向にあるものの、投票には参加しないケースも少なくない。





