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焦点:財務相に片山さつき氏、省内知る「能吏」 円安対処も課題

2025年10月21日(火)17時11分

 21日に発足する高市早苗内閣で、財務相に片山さつき元地方創生担当相(写真)を起用することが決まった。10月21日、東京で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takaya Yamaguchi Takahiko Wada

[東京 21日 ロイター] - 21日に発足する高市早苗内閣で、財務相に片山さつき元地方創生担当相を起用することが決まった。女性の財務相は初で、高市政権の目玉人事と言える。旧大蔵省出身で、財務省の考えや政策決定プロセスに精通する「能吏」との見方もあり、「責任ある積極財政」を掲げる高市内閣の経済・財政政策をどう舵取りするのか注目が集まる。高市トレードで強まる円の先安観への対処も求められる。

<初仕事は補正編成>

片山財務相の初仕事は、経済対策を裏付ける2025年度補正予算案の編成となる。賃上げや所得向上に向けた環境整備に加え、豪雨被害などへの災害対応では課題が残る。

経済対策の策定指示のタイミングに関し、高市首相は「(就任後)すぐに」と述べた。きょうにも関係閣僚に策定を指示し、年内の補正予算成立を視野に入れる。

今月下旬の来日を調整するトランプ米大統領とは、関税合意に伴う投資案件の選定を急ぐ構えだ。米側から防衛費のさらなる増額を求められる可能性も取りざたされており、財源面から経済成長と財政健全化をいかに両立させるか、片山氏の手腕が問われる。

<根強い円先安観>

賃上げを起点とする経済成長の実現に向けては、円の先安観にどう対処するかも課題となる。財政スタンスに中立とみられる片山氏の起用で「過度な円安をかわす狙いがあるのではないか」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志主席エコノミスト)との声がある。

米国が利下げに向かう一方、日本は利上げサイクルを止めておらず、日米金利差の縮小観測を受けた円安反転の流れは物価の上昇圧力を和らげそうだが、高市氏の経済政策「サナエノミクス」への期待感から党総裁選出以降、市場では円安圧力がくすぶる。

デフレからの完全脱却を巡り、政府からは次年度以降も5%以上の賃上げを期待する声が強い。円安が追い風となり11月にかけ公表される業績見通しが好転し、今後の労使交渉に弾みがつくことも期待される。

半面、円安に伴う物価高が家計を直撃するのは必至で、政府内では「(円安を)放置すれば物価高対策が無駄になる」(関係者)との声も強い。物価高に負けない賃上げ定着を巡っては、依然として課題が残る。

片山氏は自民党の金融調査会長を務めていた今年3月、ロイターとのインタビューで、「ドル/円は120円台の時期が長かったので、120円から130円、120円台が実力との見方が多い」と述べ、物価高の沈静化に向け円高進行が望ましいとの考えを表明した。

片山氏は円高を実現するための手段として金融政策については明言を避け、間接的な誘導策の一つとして、日本株の長期保有に対して相続税の一部免除などを実現したいとの意向を示した。

<玉木案から一転>

片山氏は1982年に大蔵省(現財務省)に入省した。在職中は、女性初のG7(主要7カ国)政府代表団員や主計局主計官(防衛担当)を歴任し、話題になった。「財務省出身で同省を知り尽くした能史」(SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジスト)との受け止めが聞かれる。

2018年には第4次安倍改造内閣で入閣した。地方創生や女性活躍に奔走。21年には自民党の金融調査会長に就いた過去を持つ。

複数の政府、与党関係者によると、新政権発足に先立つ野党との連立協議では、国民民主党との連立も視野に玉木雄一郎代表を「財務相兼副総理」に起用する案があった。

ただ、日本維新の会からの閣外協力にこぎ着け、女性閣僚の登用方針に傾いた。省内からは「直前までノーマークだった」(幹部)との声が漏れる。

ロイター
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