インドネシア中銀、政府預金の金利引き上げで合意 独立性への懸念も

9月8日、インドネシア政府と中央銀行(BI)は、政府プログラムの財源確保に向けた異例の協定について、懸念払しょくに努めた。ジャカルタで1月15日撮影(2025年 ロイター/Willy Kurniawan)
Gayatri Suroyo Stefanno Sulaiman
[ジャカルタ 8日 ロイター] - インドネシア政府と中央銀行(BI)は8日、政府プログラムの財源確保に向けた異例の協定について、懸念払しょくに努めた。アナリストからは、中央銀行の独立性が損なわれるとの疑問の声が上がっている。
BIは、プラボウォ大統領が掲げる住宅や協同組合のプロジェクト資金を支援するため、政府預金に支払う金利を引き上げる。当局はこれを「負担分担」と表現している。こうした費用のかかるプログラムが財政に与える影響への懸念が高まる中での協定だ。
ジャカルタのパラマディナ大学のエコノミスト、ウィジャヤント・サミリン氏は、今回の合意は「独立した機関としてのBIの評判を損なう可能性がある」と指摘。他の信頼できる中央銀行で同様の協定を知らないと述べた。
財務省とBIは8日、この負担分担協定を「透明性、説明責任、強固なガバナンスをもって」実施すると表明。共同声明では、金利引き上げはプログラム終了まで適用されるとしたが、具体的な金利水準、支払い額、プロジェクト期間には言及しなかった。
今回の協定は、約3年前に議会がBIの責務に「物価の安定」に加え「経済成長」を追加して以来、BIの独立性に関する懸念を再燃させた。
S&Pグローバル・レーティングのソブリンアナリスト、レイン・イン氏は、この合意を異例だと評した。通常、多くの中央銀行は預金金利を引き上げるのではなく、政府に配当を支払う形で貢献すると指摘。「歳入への圧力を考えると、今回の動きは財政赤字を政府目標に近づけるための資金調達の取り組みとみている」とロイターに語った。
インドネシア大学経済社会研究所のジャヘン・レズキ氏も、この合意で長期的にはインフレが目標を上回るリスクがあると警告した。政府の中央銀行への干渉がインフレ高騰につながったトルコを「極端な」例として挙げた。
政府は8万の村落協同組合を設立し、各協同組合が国有銀行から最大30億ルピア(約18万5000ドル)の融資を受けられるようにしたい考えだ。プラボウォ大統領は、年間300万戸の低価格住宅を建設し、国有銀行から借り入れた住宅ローンの金利支払いを政府が補助すると公約している。
ジャヘン氏は「この協定は、政府がポピュリスト的な政策をより大胆に導入する道を切り開く」と述べた。