インタビュー:USスチール、完全買収の考え全く変わっていない=日鉄副会長

日本製鉄の森高弘副会長は、ロイターとのインタビューで、米鉄鋼大手USスチールについて100%買収を目指す考えに変わりはないと述べた。写真は都内で2023年11月撮影(2025年 ロイター/Ritsuko Shimizu)
Ritsuko Shimizu Yuka Obayashi
[東京 21日 ロイター] - 日本製鉄の森高弘副会長は、ロイターとのインタビューで、米鉄鋼大手USスチールについて100%買収を目指す考えに変わりはないと述べた。完全子会社でなければ、コアな技術は供与できないとの従来からの考えを改めて示した。
森氏は「100%保有していればコアな技術まで共有して強くできるが、ジョイントベンチャーであればコアな部分は出せない。いずれコンペティター(競合他社)になる可能性がある」と指摘、「完全買収という考えは全く変わっていない」と述べた。
ロイターは、トランプ米政権がUSスチールの買収を承認した場合、日鉄がUSスチールの事業に140億ドル(約2兆円)の投資を計画している、と伝えた。現行計画の27億ドル(約4000億円)から大幅に増額する。日鉄は141億ドル(約2兆円)を投じてUSスチール買収を計画しており、投資額も買収価格と同規模に膨らむことになる。
森氏は、追加投資についてはコメントを控えるとした上で「リターンがないと投資しない。追加で何か投資したとしても、その追加投資よってリターンが生じるめどが立っている」と述べ、投資額を積み増せばリターンも増えていくことを強調した。
対米外国投資委員会(CFIUS)の再審査は21日に期限を迎え、トランプ大統領に報告を行うことになる。トランプ氏はそれから15日以内に買収計画の是非を判断する。
森氏は「CFIUSの審査も最終局面なので、具体的な協議内容についてはコメントを控えざるを得ない」とした上で、社名を変えず本社をピッツバーグに残す、新しい取締役の過半数は米国籍とする、取締役会に少なくとも3名の米国籍の独立取締役を含むなど「前例のないガバナンス体制を取ることによって、トランプ大統領が心配している内容については十分クリアしていると思っている」と述べた。
また、最終決定者であるトランプ氏の意向を知るためにも、CFIUS議長であるべセント財務長官に面会の要請を行っていることを明らかにした。
森副会長はUSスチール買収について「米国のためになる。USスチールも強くなるし、米国自体も強くなる。サプライチェーンも強靭(きょうじん)化する。経済や安全保障面で問題があるはずもない。トランプ大統領の政策とも100%一致している」との考えを改めて示した。外部から投資を飛び込み、製造業を強くし、現在輸入に頼っている製品が国内で製造できるようになり貿易不均衡も是正されると指摘し、「トランプ大統領に正しく理解されれば、承認してもらえると思う」と語った。
*インタビューは20日に実施しました。