ニュース速報

ワールド

アングル:米大統領選、ケネディ氏無所属出馬ならバイデン・トランプ氏痛手

2023年10月05日(木)07時28分

 2024年米大統領選の民主党候補指名争いに名乗りを上げているロバート・ケネディ・ジュニア氏(写真)が無所属に転じて大統領選に挑戦する見通しとなった。7月25日、ニューヨークで撮影(2023年 ロイター/Amr Alfiky)

Jeff Mason Heather Timmons

[ワシントン 3日 ロイター] - 2024年米大統領選の民主党候補指名争いに名乗りを上げているロバート・ケネディ・ジュニア氏が無所属に転じて大統領選に挑戦する見通しとなった。政治アナリストは、激戦州で民主党バイデン氏や共和党トランプ氏から票を奪い選挙戦の構図が複雑化する可能性を指摘する。

環境弁護士、反ワクチン活動家として知られるケネディ氏は、故ロバート・ケネディ元米司法長官の息子で、1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ元大統領のおいに当たり、知名度が高い。9日にフィラデルフィアで無所属での出馬を発表するとみられる。

民主党と共和党の二大政党制は、1世紀以上にわたって大統領選を支配してきたが、過去には第3党の候補が結果を左右したこともある。

ペンシルベニア、ミシガン、ジョージア、アリゾナなど一部の激戦州においては、バイデン氏もしくはトランプ氏が勝利するかどうかは数千人の有権者にかかってくる可能性がある。アリゾナ州などでは、どちらの党にも登録していない無党派層が決め手になりそうだ。

バイデン氏やトランプ氏への支持が広がりを欠く中、ケネディ氏の富裕な後援者と知名度は両陣営から票を奪うのに役立つかもしれない。

左派系の政治戦略会社サード・ウェイの共同設立者マット・ベネット氏は「トランプ氏の支持率は50%に届いていないが安定している。トランプ氏との一騎打ちでバイデン氏を仕方なく選ぶような有権者は、ケネディ氏についてよく知らなくても同氏に投票するかもしれない」と述べた。

ケネディ氏の政治的立場には、バイデン氏の中道左派の支持層よりも、反ワクチンや陰謀論を受け入れるトランプ氏支持層と一致するものもある。ファイブサーティーエイトがまとめた世論調査によると、ケネディ氏は民主党支持者よりも共和党支持者へのアピールが強いという。

共和党のストラテジストたちは、ケネディ氏の参戦にはメリットとデメリットがあると話す。フォード・オコネル氏は「トランプ氏から票を吸い上げる可能性は確かにあるが、バイデン氏の方がより大きな痛手を被るだろう」と指摘し、トランプ氏の支持者の方がバイデン氏支持者よりも熱狂的であることを理由に挙げた。

<反ワクチン活動家としての横顔>

ケネディ氏が設立した非営利団体「チルドレンズ・ヘルス・ディフェンス」は、COVID─19(新型コロナウイルス感染症)ワクチンを接種した子どもの死亡率が高いといった情報を流布したとされる。

また、ケネディ氏を含む反ワクチン活動家たちが、19年に米領サモアでワクチンの安全性に関する誤った情報を広めた結果、数十人の幼児がはしかで死亡したという。

ケネディ氏は7月の議会証言で、ワクチンに反対したことはないし、国民にワクチンを避けるように言ったこともないなどと主張した。

<高い好感度、年齢も武器に>

ロイター/イプソスの9月の世論調査によると、ケネディ氏の好感度はトランプ氏やバイデン氏よりも高い。回答者の51%がケネディ氏に好意的な見方をしているのに対し、バイデン氏は45%、トランプ氏は40%だった。ただ、民主党の指名争いにおいては、バイデン氏がケネディ氏を50ポイントほどリードしている。

69歳のケネディ氏は、80歳のバイデン氏や77歳のトランプ氏よりも若い候補者を望む有権者にとって魅力的に映るかもしれない。ロイター/イプソスが昨年11月に実施した世論調査では、約86%が大統領の最高年齢を75歳に制限すべきと回答している。

ケネディ氏の選挙キャンペーンには、既に複数の政治活動委員会から数百万ドルの資金が集まっており、保守派の人気ポッドキャスターやハリウッドスターからも支持を得ている。ケネディ氏の妻は米女優のシェリル・ハインズさんだ。

<第3党候補は他にも>

24年大統領選には、進歩派(プログレッシブ)的な活動家として知られる哲学者のコーネル・ウェスト氏も、第3党から立候補すると表明している。ウェスト氏の選挙マネージャーであるピーター・ダオウ氏は、X(旧ツイッター)への投稿でケネディ氏の参戦を歓迎した。

ウェストバージニア州選出の民主党上院議員ジョー・マンチン氏も、第3党候補として大統領選に出馬する可能性をちらつかせている。2000年の大統領選で民主党の副大統領候補だったジョー・リーバーマン元上院議員は、24年大統領選の候補を擁立する可能性のある第3政党グループ「ノーレーベルズ」の創設会長を務める。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド、パキスタンによる国境全域での攻撃発表 パキ

ビジネス

日経平均は続伸、米英貿易合意や円安を好感 TOPI

ビジネス

日本製鉄、今期純利益は42%減の見通し 市場予想比

ビジネス

リクルートHD、今期10%増益予想 米国など求人需
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 10
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中