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岸田首相が施政方針演説、「賃上げ率一気に反転」 四半期開示を見直し

2022年01月17日(月)14時51分

 1月17日、通常国会が開会し、岸田文雄首相(写真)は衆院本会議で施政方針演説を行い、賃上げなど人への投資の重要性を訴え、春闘に向けて「賃上げ率の低下トレンドを一気に反転させたい」と期待感を表明した。写真は都内で昨年12月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

[東京 17日 ロイター] - 通常国会が17日開会し、岸田文雄首相は衆院本会議で施政方針演説を行い、賃上げなど

人への投資の重要性を訴え、春闘に向けて「賃上げ率の低下トレンドを一気に反転させたい」と期待感を表明した。年内に非財務情報の開示ルールを策定する。新型コロナワクチンの3回目接種の前倒しや、脱炭素に向けた投資加速などを唱えるとともに、企業の四半期開示の見直しを行うと改めて表明した。

<3回目のワクチン、前倒し接種>

岸田首相は冒頭「わが国は、オミクロン株の感染急拡大に直面している」と述べ、「政権の最優先課題は、コロナ対応」と指摘した。

その上で「オミクロン株について、感染力が高い一方、感染者の多くは軽症・無症状であり、重症化率は低い可能性が高い」との専門家の知見を引用し、「リスクが高い方々に、的確に医療を提供することに主眼を置いて、医療提供体制を強化する」と語った。

ワクチンは「医療関係者、高齢者3100万人を対象とする3回目接種の前倒しについて、ペースアップさせる」とした。

「3月以降は、追加確保した1800万人分のワクチンを活用し、高齢者の接種を6カ月間隔で行うとともに、5500万人の一般向け接種も、少なくとも7カ月、余力のある自治体では6カ月で接種を行う」と説いた。

在日米軍の感染拡大防止措置に触れ、「在日米軍の駐留に関わる保健・衛生上の課題に関し、地位協定に基づく日米合同委員会において、しっかり議論する」とした。

春闘に関しては「近年、賃上げ率の低下傾向が続いているが、このトレンドを一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げを実現することを期待する」と述べ、「できる限り早期に、全国加重平均1000円以上となるよう、最低賃金の見直しに取り組む」と強調した。

「官民の人への投資を、早期に、少なくとも倍増する」と述べ、「人的投資が、企業の持続的な価値創造の基盤であるという点について、株主と共通の理解をつくっていくため、今年中に非財務情報の開示ルールを策定。あわせて四半期開示の見直しを行う」方針を打ち出した。

<脱炭素で投資加速──アンモニア、核融合>

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて「この分野への投資を早急に、少なくとも倍増させ、脱炭素の実現と、新しい時代の成長を生み出すエンジンとする」と述べた。

投資分野や論点として「送配電インフラ、蓄電池、再生エネルギーはじめ水素・アンモニア、革新原子力、核融合」「カーボンプライシング」などを列挙した。

外交では「中国には、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求める」とし、「同時に、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、本年が日中国交正常化50周年であることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指す」と強調した。

「おおむね1年をかけて、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を策定する」とし、「いわゆる『敵基地攻撃能力』を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する」と説明した。

北朝鮮が繰り返しているミサイル発射を巡っては「断じて許されず、ミサイル技術の著しい向上を見過ごすことはできない」と非難した。

<建設統計の不適切処理を陳謝>

昨年末に明らかになった建設工事受注動態統計調査における不適切な処理について「国民の皆さんにおわび」を述べ、「政府統計全体の信頼を回復するべく指導・監督する」と語った。

幕末の偉人、勝海舟の「行蔵は我に存す」「己を改革す」との言葉を引用し、 「統計の不適切処理はもとより、われわれ政治・行政が、自らを改革し、律していくことが求められている」と指摘し、「引き続き『信頼と共感』の政治に向けて、謙虚に取り組む」と締めくくった。

ロイター
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