ニュース速報

ワールド

香港民主派紙リンゴ日報、26年の歴史に幕 最終版に長蛇の列

2021年06月24日(木)13時42分

香港の民主派系新聞、蘋果日報(リンゴ日報)は24日、最後の新聞(写真)を発行して26年の歴史に幕を閉じた。24日、香港で撮影(2021年 ロイター/Tyrone Siu)

[香港 24日 ロイター] - 香港の民主派系新聞、蘋果日報(リンゴ日報)は24日、最後の新聞を発行して26年の歴史に幕を閉じた。香港国家安全維持法(国安法)に基づいて当局に資産を凍結され、廃刊に追い込まれた。香港の中心街には早朝から最終版を買い求める市民の長い列ができた。

同紙はオンライン上の声明文で「全ての読者、定期購読者、広告主、香港人の26年間の大きな愛と支持に感謝する。ここでお別れとなる。ご自愛を」とつづった。

一部のスタッフは廃刊に怒りと不満を表明。同紙デザイナーのディクソン・ン氏(51)は「きょう(以後)、香港には表現の自由がなくなる。私には香港で何の未来も見いだせない。大きな失望と怒りを感じている。こうした状況下でなぜ会社と新聞の業務が停止されなければならないのか理解できない」と語った。

追い打ちをかけるように、公共放送の香港電台(RTHK)は、複数の違反があったとして香港科技園公司がリンゴ日報に貸していた土地の返還を求めていると伝えた。リンゴ日報からはコメントを得られなかった。

<通常の10倍以上印刷>

最終版は通常の10倍以上となる100万部を印刷した。

23日夜には、雨の中、多く人が同紙の本社前に集まり、スマートフォンのライトを振って支援を表明、記者らもバルコニーに出てそれに答えた。

最終版の1面トップには「香港人が雨の中でつらい別れ」という見出しと、本社前の支持者にスタッフが手を振る写真を掲載した。

早朝から新聞を買い求める列に並んだある女性は「記者たちが信念を持ち続け、頑張ってくれることを願っている」とコメントした。リンゴ日報が生き残れなければ、報道の自由はなくなるとの声も聞かれた。

同紙は23日夜、最後の新聞制作を進める編集フロアを報道陣に公開した。最終版が印刷所に送られると、編集者からは拍手が上がり、涙ぐむ人もいた。

リンゴ日報は12歳の時に中国本土から香港に渡った黎智英(ジミー・ライ)氏が1995年に創刊した。中国共産党に批判的な論調で知られるが、有名人のゴシップなど芸能記事も扱う。専門家は、同紙の廃刊は、香港におけるメディアの自由の一時代の終わりを告げていると指摘する。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米大統領、史上最大「トランプ級」新型戦艦建造を発表

ワールド

韓国中銀、ウォン安など金融安定リスクへの警戒必要=

ビジネス

米国との貿易協定、来年早々にも署名の可能性=インド

ビジネス

26年度予算案の想定金利3%程度で調整、29年ぶり
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中