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アングル:米企業、従業員のワクチン接種確認で混乱 不明確な当局指針
米国最大のにんにく農場が今、収穫期を迎えて思わぬ壁に突き当たっている。季節労働者を1000人採用する必要があるが、今年は新型コロナウイルスワクチンの接種状況を記録しなければならないのだ。写真はカリフォルニア州サンタクララ郡にある農場経営企業クリストファー・ランチのエントランス、2019年3月撮影(2021年 ロイター/Lucy Nicholson)
[21日 ロイター]] - 米国最大のにんにく農場が今、収穫期を迎えて思わぬ壁に突き当たっている。季節労働者を1000人採用する必要があるが、今年は新型コロナウイルスワクチンの接種状況を記録しなければならないのだ。
カリフォルニア州サンタクララ郡は6月1日付で企業に対し、労働者が接種済みかどうかを確認し、未接種と答えたか回答を拒否した者については、14日ごとに状況をチェックするよう義務付けた。
忙しい収穫期のまっただ中という、最悪のタイミングだ。
農場経営企業クリストファー・ランチの執行バイスプレジデント、ケン・クリストファー氏は、だれが接種済みかを確認しつつ、個人情報保護法に従い、かつ労働者が安全性規約や検査義務を守っているかを監視するシステムを開発せざるを得なかったと言う。
「政府がワクチン接種を義務化したいのなら、それはそれで分かる。だがわれわれに監視を求めるとは、なんとも奇抜だ」
クリストファー氏は差別や摩擦を避けるため、接種済みの労働者と未接種者でシフトを分ける方式を検討中。しかし労働者に接種状況を尋ね、データベースにその詳細を入力するとなると、採用に支障をきたす恐れがある。
「政府に追加情報を提供することになる。提供する情報が積み重なるほど、労働者はわが社で職を求めるのを不快に感じるだろう」
シリコンバレー郡では、ワクチン未接種者や、雇い主に接種の有無を明らかにしない人々は、引き続きマスク着用を義務付けられ、長距離通勤の禁止や定期的な新型コロナ検査結果の提出など、その他の規約にも従う必要がある。
労働専門弁護士によると、企業は現在、従業員を安全に職場復帰させ、マスク着用義務を廃止することを検討中。そうした中で、接種確認についてのルールが全米でどのように展開していくかを注視している。
しかしバッジやブレスレットによって接種済みの人々を見分けられるようにする必要が出てくると、差別問題が浮上し、採用が困難になりかねない。折しも米国はコロナ禍が和らぎ、労働需給が引き締まっている。
カリフォルニア、ミシガン、オレゴンなど複数の州は、労働者のワクチン接種状況の確認について独自のルールや指針を設けている。概してサンタクララ郡のルールほど厳しくはない。
一方、弁護士によると、モンタナ州は最近施行された法律により、雇用主が労働者にワクチン接種状況を尋ねるのを控えるよう求められている。差別の訴えにつながりかねないからだ。
オグルトリー・ディーキンズの雇用弁護士、エリック・ホブズ氏は「まるで毛玉だ。全部こんがらがっている」と嘆く。
職場の安全性に関する規制当局、米労働安全衛生局(OSHA)はこの問題について明確な指針を示していない。ディレクター代行のジム・フレデリック氏はロイターに対し「自らの職場でどのように適切にこれを行っていくかは、引き続き雇用主の決定に任せる」と述べた。
<緋文字>
米疾病対策センター(CDC)は先月、ワクチン接種済みの人々については大半の屋内の場所で顔を覆う義務を解くと発表した。しかし接種済みか否かをどう確認するか、という厄介な問題には触れていない。
プロダクトデザイン企業、フレックスの幹部であるピーター・ハント氏は「わが社を含め、企業が目下議論しているのは、バッジによって、あるいは首に何かを掛けることで、『はい、この人たちは接種済みなのでマスクを着けていなくても心配いりません』と識別できるようにする必要があるかどうかだ」と述べた。
しかし抗ワクチン運動を行うチルドレンズ・ヘルス・ディフェンスの幹部、アリックス・メイヤー氏は、そうした措置を警戒する。
接種状況を聞くことを雇用主に義務付けるのは、要するにワクチン接種の義務化だとメイヤー氏は指摘する。なぜなら未接種者はマスクを着用する必要があり、これは「緋文字(烙印)」に等しいからだという。
大企業の環境・健康・安全性に関する業界団体フィルマー・レギュラトリー・ラウンドテーブルのディレクター、ヘレン・クリアリー氏は、企業に従業員が接種済みかどうかを証明、あるいは開示させるより、従業員がマスクに関する規則を守ることを信頼する自由を認めるべきだと指摘。「われわれは多くの面で従業員を信頼している。たとえばレジのお金を盗まないと信じている。われわれは自主管理制度を支持しており、これによって多くの問題が和らぐと考えている」と述べた。
(Marco Aquino記者)