ニュース速報

ワールド

情報BOX:英の変異種、死亡率上昇データが示す新たなリスク

2021年01月26日(火)16時18分

 英国の科学者が、同国で見つかった新型コロナウイルス変異種について、感染力が高いだけでなく死亡率が従来型より約30%高い恐れがあるとの見方を発表した。2020年3月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

[ロンドン 25日 ロイター] - 英国の科学者が、同国で見つかった新型コロナウイルス変異種について、感染力が高いだけでなく死亡率が従来型より約30%高い恐れがあるとの見方を発表した。

「B.1.1.7」と呼ばれるこの変異種は、英国で広がっている他の型に比べて感染力が最大70%高いとされ、既に世界各地でも感染が確認されている。米公衆衛生当局者らは、これが3月までに米国で最も支配的な変異種になる恐れがあると指摘している。

<英科学者の新たな科学的証拠とは>

死亡のリスクの科学的証拠は、英政府の諮問機関である「新型呼吸器系ウイルス脅威諮問グループ(NERVTAG)」が示した。同一のデータ集合体を使った4種類の別々の研究に基づいている。こうした研究は、地域住民のウイルス検査のデータをコロナ死者と関連づける。

分析結果は研究ごとにわずかに異なっていたが、いずれも「B.1.1.7」変異種に感染した人の死亡率が、英国の他の型に感染した人々よりも高いことを示した。

「B.1.1.7」の方が死亡率が低いことを示す分析結果は皆無だった。

NERVTAGはこの結果を1つのモデルにまとめ、同モデルが平均的な死亡率のリスクを推計した結果、約30%高まるとの数字になった。

<科学者らは分析結果の確度をどの程度と考えているか>

英政府のパトリック・バランス首席科学顧問は22日、様々な小規模情報の集合からデータを取ったため、死亡率の推計には一定の「不確実性」があると述べた。

イングランド公衆衛生局(PHE)の専門家、スーザン・ホプキンズ氏は暫定的な推計値について、変異種感染の流行が確認されている英国の人口のうち、比較的小さな割合を分析した結果だと説明。「全てのデータ源ではなく、一部のデータ源」から得られた科学的証拠が死亡率の高まることを示している状態だと述べた。「まだ、全体像が見えていない可能性はある」とした。

レスター大学の臨床ウイルス学者、ジュリアン・タン氏も、データ量が少ないため、結果は「今後大きく変化する可能性が残る」と述べた。

ただ、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の感染症数理モデル教授、ジョン・エドマンズ氏は25日、分析結果の不確実性について意見を問われ、分析結果は「統計上有意」であり真剣に受け止めるべきだと述べた。

エドマンズ氏は「かなり多くの科学的証拠がある。意義は小さくない」とし、一朝一夕ではなく「われわれが数週間かけて取り組んだ」結果だと擁護した。

<死亡率が高まる仕組みは分かっているか>

科学者らはその点について、まだ確信を持っていない。だが、解明に取り組んでいる。

PHEのホプキンズ氏は「この変異種の科学的証拠はまだ出てきている途中であり、仕組みを完全に理解するための研究は続いている」と述べた。

しかし、この変異種は、人間の細胞により強く結び付くことができるようにウイルスの一部が変異したという点は分かっている。

NERVTAGの座長を務めるオックスフォード大学のピーター・ホービー新種感染症教授は「実際に観察されている感染率上昇および、可能性として考えられる重症化リスク上昇の両方の原因として、これが生物学的に見て最も妥当な説だ」との考えを示した。

レディング大学のサイモン・クラーク細胞微生物学助教授は、より強く人間の細胞と結び付くという特徴が「免疫システムの強い過剰反応を引き起こし、これが症状の最悪化を招き、死に至らしめる可能性」を指摘した。

<死亡率上昇はどのくらい懸念すべきか>

死亡率が推計で約30%高まるという分析の1つを主導したロンドン大のエドマンズ氏は、この科学的証拠について「非常に深刻な状況暗転だ」と指摘。「このウイルスは非常に深刻なものであり、非常に深刻に受け止める必要がある」との考えを示した。

一方、PHEは書面で、(全ての年齢グループにわたる)新型コロナ感染1回当たりの死亡の絶対リスクは「新たな変異種でも従来型でも、依然として低い」と強調している。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国民「黄金時代」に懐疑的、68%が「経済活況」同

ビジネス

英航空IAG、25年は利益が予想上回る プレミアム

ワールド

パキスタンとアフガニスタンの衝突再燃、周辺国や中ロ

ワールド

パキスタンとアフガニスタンの衝突再燃、周辺国や中ロ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 5
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 6
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「まるで別人...」ジョニー・デップの激変ぶりにネッ…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    【和平後こそリスク】ウクライナで米露が狙う停戦「…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 9
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 10
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中