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情報BOX:新型コロナワクチン、各国の入手時期と接種の進め方

2020年11月29日(日)08時29分

 複数の製薬企業は、規制当局が向こう数週間でワクチンを承認してくれれば、ほぼ即座に世界各地の政府と協力して配布を始められるとしている。それには、だれがワクチン接種を受けるか、どんな順番で接種するかを決める必要がある。写真はパリ近郊の病院で10月撮影(2020年 ロイター/Benoit Tessier)

[ニューヨーク 25日 ロイター] - 新型コロナウイルスのワクチンで米製薬大手・ファイザーとドイツのバイオ企業・ビオンテック、これと別に米バイオ企業のモデルナが、約95%の有効性を示す臨床試験結果を発表。英製薬大手・アストラゼネカも今週、同社のワクチンの有効性が最大90%の可能性があると発表した。

こうした企業は、規制当局が向こう数週間でワクチンを承認してくれれば、ほぼ即座に世界各地の政府と協力して配布を始められるとしている。それには、だれがワクチン接種を受けるか、どんな順番で接種するかを決める必要がある。

想定されるプロセスの概略をまとめた。

<本格配布の時期>

ファイザー、モデルナ、アストラゼネカは、既にそれぞれのワクチン製造を始めている。ファイザーによると年内に2500万人分、モデルナは1000万人分、アストラゼネカは1億人分以上を生産する。

米国では、国防総省と米疾病対策センター(CDC)が配布を管理する。開始の可能性が高いのは12月半ばで、初回分は全米で640万人分が見込まれる。

英保健当局も、ワクチンを承認したらできるだけ早く本格配布する計画。時期は12月中の見込み。

欧州連合(EU)では、国民向けのワクチン配布開始は各加盟国に任せられる。

<米国での開始>

CDCは米食品医薬品局(FDA)承認後の最初の対象者が、医療従事者約2100万人と長期療養施設の居住者300万人になると表明している。

次に対象となる可能性が高いのは、在宅では対応できない、社会生活維持に不可欠な仕事の従事者8700万人。消防士、警察官、学校や輸送関連、食品、農業関連、食品サービスの労働者などだ。

その次が、持病などで健康状態のリスクが高い成人約1億人と、65歳で区切る高年者になる。

米公衆衛生当局者によると、一般向けには来年4月から薬局、診療所などで大半の米国民がおおむねワクチン接種を受けられるようになる。6月末までには希望者はだれでも接種してもらえるようになるとしている。

子供の場合は、接種を受けられるようになる時期がはっきりしない。ファイザーとビオンテックは、最も若くて12歳のボランティアへの臨床試験を開始している。

<他の国での開始>

EU、英国、日本、カナダ、オーストラリアは、いずれもワクチンの規制手続きを急ピッチで進めている。

アストラゼネカの年内の生産分は、多くが英国向けとなる見通し。英保健当局者によると、承認されれば12月にも接種が始まる可能性がある。介護施設の居住者や、そこで働く人たちが最優先される。

欧州では、EU医薬品規制当局が12月にワクチンの安全性を判断する可能性があると表明している。

EU加盟国の大半は、最初の対象者が高齢者や体の弱い人、医者のような前線の労働者になるとしている。

加盟国によると、ワクチン購入は欧州委員会がワクチン6種類、約20億回分を契約した共同調達計画を通じて行う。

配布の日程のめどは、国によって違う。大半の国は、まだ配布と接種の計画を策定中だ。

イタリアは、来年初め頃にはファイザー・ビオンテック連合とアストラゼネカのそれぞれからワクチンを受け取っている見込み。スペインは1月の計画だ。

ブルガリアの保健責任者は、最初の入荷が来年3─4月になると想定している。ハンガリー外相は、早ければ来年春に入手すると述べた。

ビオンテックの本国であるドイツは、来年初め頃に本格的な接種を見込んでいる。展示会ホールや空港ターミナル、コンサート会場を大規模接種拠点とする想定だ。介護施設向けには移動接種チームも用いる。前線で働く医療従事者や、新型コロナの重症化リスクのある人たちが、最初に接種を受ける見込み。

<発展途上国への配布>

世界保健機関(WHO)と発展途上国へのワクチン普及を進める国際組織「Gaviワクチンアライアンス」が主導し、中高所得国や非政府組織(NGO)が資金を拠出する新型コロナワクチン共同購入の枠組み「COVAX」は、これまでに20億ドルを集めた。

CAVAXの当初目標は、貧困状態にある発展途上国の国民の3%への接種で、最終的に20%の接種率を目指す。CAVAXはアストラゼネカのワクチン購入で暫定合意している。アストラゼネカのワクチンはファイザーなどと違い、超低温での保管が必要ない。

アフリカのより低所得の国やインドなどの東南アジア諸国は、COVAXの計画を通じて、来年に低価格ないし無料でワクチンを得られることを期待しているが、まだ確実ではない。

中南米などの国も、COVAX経由でワクチンを購入するかもしれない。医薬品メーカーと供給契約を結んだ国もある。

<ワクチン費用>

ワクチンメーカーと各国政府はさまざまな価格交渉をしており、す全てが公表されているわけではない。

アストラゼネカのワクチン1回分で数ドル相当というケースから、2回接種するファイザーの1コース分で最大50ドルというケースもある。多くの政府は、国内居住者への接種費用は支払うことを表明している。

ロイター
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