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焦点:トランプ政権の通商協議、ゴール見えない主要国との交渉

2019年12月06日(金)08時19分

 トランプ氏は2016年の米大統領選で、通商政策を大幅に見直し、拡大を続ける米貿易赤字を削減すると約束した。ところが現在、米国の貿易相手上位10カ国のうち韓国以外とは、協定が発効していない。写真は米ニューハンプシャー州のマンチェスターで、8月15日撮影(2019年 ロイター/Jonathan Ernst)

[ワシントン 3日 ロイター] - トランプ氏は2016年の米大統領選で、通商政策を大幅に見直し、拡大を続ける米貿易赤字を削減すると約束した。ところが現在、米国の貿易相手上位10カ国のうち韓国以外とは、協定が発効していない。日米間の第1弾の通商協定は2020年1月に発効するが、それ以外の国・地域との間では協議の先行きが不透明で、新たな通商協定締結の見通しが立たない状態だ。

米国と主要貿易相手の通商協議の進捗状況をまとめた。

<中国>

かつては米国にとって最大の貿易相手だったが、米国との貿易摩擦が1年5カ月にわたり続いている。トランプ氏は3日、中国との通商合意について「期限はなく」、来年の大統領選の「後まで待つという考え」が良いと思うと発言し、株価が急落した。

中国が米国にとって最大の貿易相手だった2018年には、米国の財の貿易に占める中国の比率は15.7%だった。その後、米中間の貿易は大幅に減少。中国は今年1─9月に米国の貿易全体に占める割合が13.5%となり、順位がメキシコ、カナダに次ぐ第3位となった。

<メキシコとカナダ>

トランプ政権は18年にメキシコ、カナダの両国と北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を行った。

しかし、NAFTAを見直した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)は、まだ米議会で批准されていない。議会民主党はUSMCAについて、労働者の保護を強化し、薬価下落につながるような変更を盛り込むよう求めており、1兆2000億ドル規模の自由貿易圏は、先行きが見通せない。

<欧州連合(EU)>

トランプ氏はEUから輸入される自動車に最大25%の関税を課す考えを示唆してきた。期限を過ぎても導入の有無を決めていないが、交渉に弾みが付かなかったことから、計画自体は撤回していない。

この案件とは別に米通商代表部(USTR)は2日、世界貿易機関(WTO)がEUによる欧州航空大手エアバスへの補助金はルール違反だと改めて認定したことを受けて、EU製品に対する追加関税を検討すると発表。

フランスのデジタルサービス税への報復措置として、チーズやハンドバッグ、シャンパンなどフランスからの輸入品24億ドル相当の課税リストを公表した。

EUは米国にとって18年の最大の輸出市場で、米国からの輸入は財が3190億ドル、サービスが2560億ドルだった。EU加盟国のうちドイツ、フランス、英国、イタリアの4カ国は、いずれも18年に米国の貿易相手上位10カ国に入っていた。

<日本>

トランプ氏と安倍晋三首相は9月、通商協定の最終合意を盛り込んだ共同声明に署名した。日本は牛肉や豚肉など米農産物、約70億ドル相当について日本市場へのアクセスを改善し、米国は引き換えに日本製の一部工業製品の関税を引き下げる。

この「第1弾」の通商協定は4日、参院で承認され、日本側の批准手続きが完了。日米間の協定は2020年1月に発効する。

しかし、米国の財の対日貿易赤字の最大要因である自動車は、継続協議となった。米国の財の対日貿易赤字は年初来で670億ドル。

安倍首相は、日米間の協議が2020年に再開しても、米国が自動車の関税を引き上げることはないと断言している。だが、トランプ氏は関税引き上げの可能性を排除していない。

<インド>

米国は7月、インドを一般特恵関税制度(GSP)の適用から除外し、約56億ドル相当の輸出が影響を受けた。米国とインドは、インドが電子商取引に対して新たに導入した規制や、米国製医療機器などの製品に対する貿易障壁を巡って対立している。

こうした課題を解決し、インドが農産物やオートバイ、工業製品などに課している高い関税の一部を引き下げる話し合いは、これまでのところ実を結んでいない。

<韓国>

トランプ政権は昨年、韓国と進めていた自由貿易協定(FTA)の再交渉で合意した。トランプ政権にとって内容がまとまり、実行に移された唯一の通商協定。合意によると、米国は韓国製ピックアップトラックに課している25%の関税の撤廃時期をこれまでの2021年から41年に延長し、韓国は米国からの乗用車輸入に対する規制の一部を緩和する。

ロイター
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