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焦点:ブラジル大統領選、市場は極右筆頭候補の行動力に期待
10月10日、ブラジルで28日に行われる大統領選決選投票で極右候補のジャイル・ボルソナロ下院議員(写真)が勝利し、年金改革や民営化を推し進めるとすれば、同国の資産は一段と値上がりする可能性があるとの見方が広がっている。7日、リオデジャネイロで撮影(2018年 ロイター/Ricardo Moraes)
Rodrigo Campos
[ニューヨーク 10日 ロイター] - ブラジルで28日に行われる大統領選決選投票で極右候補のジャイル・ボルソナロ下院議員が勝利し、年金改革や民営化を推し進めるとすれば、同国の資産は一段と値上がりする可能性がある──。投資家の間ではこうした見方が広がっている。
ボルソナロ氏は選挙期間を通じて自らの政策の詳細を明らかにしておらず、女性や人種などに対する差別的な態度も見受けられるが、市場はそれほど気にかけていない。ブラジル国内には、既に深刻な分断化や暴力に見舞われている社会がボルソナロ氏の言辞をきっかけにどうなっていくのかを懸念する声もあるが、やはり市場は深刻にはとらえていないようだ。
XPインベストメンツ(マイアミ)のチーフ新興国市場兼グローバル・ストラテジスト、アルベルト・ベルナル氏は「あまりに二極化がひどいのでブラジルには投資しないと言ってきた投資家は1人もいない。ブラジルに存在する二極化は英国やドイツ、米国とそう変わらない。世界はもっと分断が進んでいる」と話した。
ボルソナロ氏の第1回投票における得票率は46%と予想を上回り、2位の左派・労働党候補フェルナンド・アダジ元サンパウロ市長に約17%ポイントもの差をつけた。
投資家が引き続き恐れているのは、労働党が勝って国家主導型経済に戻り、テメル現政権が部分的に手をつけてきた改革がとん挫する事態だけに、第1回投票でボルソナロ氏がアダジ氏に対して優位に立ったことで、資産価格が上昇した。
ゴールドマン・サックスの中南米経済調査責任者アルベルト・ラモス氏は「重大な危険は労働党の介入主義的政策の復活だが、それが実現する確率はゼロでないにしても乏しくなってきている。(株式)市場が改革は実行されるとの安心感を強めれば、さらに大きく上がる可能性がある」とみている。
ストーン・ハーバー・インベストメント・パートナーズの新興国市場責任者ジム・クレイジ氏は、投資家が最も重要視しているのは年金改革だと指摘。これが実現すると確信しているとはまだ言えず、ボルソナロ氏が当選してどんな政権を樹立するかで分かってくるとの見方を示した。
ボルソナロ氏は、財務相の有力候補と目されるパウロ・グエデス氏に経済政策を任せている。グエデス氏はシカゴ大出身で、同大は経済政策について保守的かつ正統的な考えを持つことで知られる。またボルソナロ氏は、閣僚起用に向けて銀行を主体とするビジネス界の関係者とも接触している。
XPインベストメンツのベルナル氏は、ボルソナロ氏について市場は今のところ、グエデス氏が言及している内容の一部は実行し、より現実的に状況に対応できると好意的に解釈していると述べた。
10日には、グエデス氏が国営企業の年金基金が関係する不透明な資金のやり取りをした疑いで連邦検察当局の捜査対象になっていることが判明し、株価や通貨レアルが下落した。
それでもブラジル資産は上値余地がある、というのが専門家のコンセンサスとなっている。
9月半ばにボルソナロ氏が支持率でしっかりしたリードを確保しているとの世論調査結果が出て以降、ブラジル株や債券、レアルは軒並み上昇。ボベスパ指数は最高値に迫り、レアルの過去3週間の対ドル上昇率は10%を超えた。
ただ足元の1ドル=3.75レアル近辺という水準は、過去1年平均の3.52レアルや昨年平均の3.19レアルに比べればまだ安い。iシェアーズ・ブラジル上場投資信託(ETF)は今年の高値を15%程度、過去最高値は60%下回っている。