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アングル:LNG市場、アジアの需要増で一転タイト化

2018年02月19日(月)08時02分

 2月15日、液化天然ガス(LNG)はこの数年供給がだぶついていたが、アジアの需要増加で一転して需給が引き締まり、東アフリカや北米で新規開発が進む可能性が高まっている。写真は2017年11月、千葉県富津沖を航行するLNGタンカー(2018年 ロイター/Issei Kato)

[ヌサドゥア(インドネシア)/シンガポール 15日 ロイター] - 液化天然ガス(LNG)はこの数年供給がだぶついていたが、アジアの需要増加で一転して需給が引き締まり、東アフリカや北米で新規開発が進む可能性が高まっている。

トムソン・ロイター・アイコンのデータによると、世界のLNG輸入量は月間約400億立方メートルと2015年以来40%増加した。昨年は20%増と伸びが加速。中国の増加率が大きかったが、韓国や日本でも伸びた。

アジアのLNG市場は、2000年代初頭に大規模な開発が始まった影響で、2015年から供給過剰が続いていた。しかし中国の昨年のガス化政策やアジア地域全体の力強い成長に厳冬が重なって需要が高まり、LNGのスポット価格は昨年半ばから2倍に上昇した。

中国のガス化政策に変更はなく、複数のLNG輸出プロジェクトに遅れが生じているため、今年も市場は引き締まり状態を保つ見通し。三菱商事<8058.T>の西澤淳エネルギー資源第二本部長は「需要が伸びる一方でプロジェクトは遅れているから、市場はタイトな状態が続くだろう」と述べた。

西澤氏は先週インドネシアのバリで開かれたLNG業界の会合で、三菱商事が出資している米ルイジアナ州の「キャメロンLNGプロジェクト」と、テキサス州の「フリーポートLNGプロジェクト」で遅れが生じていると説明。「両プロジェクトが年内に本格的な生産に入ることはない」との見通しを示した。

国際石油開発帝石<1605.T>とフランスのトタルが進めているオーストラリアの「イクシスLNGプロジェクト」も計画が遅れ、コストが膨らんでいる。トタルの幹部によると輸出開始は第2・四半期以降にずれ込む可能性がある。

一方、アジアでは日本や中国、韓国からの需要が引き続き強い上に、南アジアや東南アジアで新たな需要が生まれている。

インドは天然ガス開発計画に着手しており、LNG輸入ターミナルを現在の4カ所から11カ所増やす。パキスタンは15年に開始したLNG輸入を大幅に拡大する方針。バングラデシュとミャンマーも輸入ターミナルの建設を計画している。

タイのLNG輸入は2036年には年3500万トンと7倍近くに増加し、世界第5位のLNG輸出国のインドネシアは国内生産の停滞で純輸入国に転じるとみられる。

マッキンゼーのアザム・モハマド氏によると、インドネシアとタイの輸入量は2030年には年7000万トン近くと、中国の昨年の輸入量に匹敵する水準に膨らむ。

LNG需給が予想外に引き締まったため、新規開発プロジェクトの見通しは数年ぶりに明るくなった。2014年半ばのエネルギー価格急落で多くのプロジェクトが先延ばしや中断に追い込まれていたが、原油・ガス価格の回復に伴ってエネルギー関連企業の業績は上向いている。

リスタッド・エナジーのジャランド・リスタッド最高経営責任者(CEO)は「アジアのLNG市場全体が拡大し、これが刺激となって開発リスクを背負うエネルギー企業が増える」とみる。

東アフリカでは米アナダルコ・ペトロリアムが近くモザンビークのガス田開発で最終的な投資決定を行う見込み。3人の関係筋によると、最近では東京ガス<9531.T>がオフテイク契約(長期契約)を間近に控えているという。

北米でもロイヤル・ダッチ・シェルや三菱商事などが参加するカナダのキティマットでのプロジェクトなど複数の輸出プロジェクトで年内の最終投資決定が期待されている。

米国ではLNG大手シェニエール・エナジーが事業の拡大を計画しているほか、ペンビナ・パイプラインもオレゴン州のプラントで最終的な投資決定を見込んでいる。

(Jessica Jaganathan記者、Henning Gloystein記者)

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