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日米首脳、北朝鮮に圧力で一致 日本に米製武器の購入迫る

2017年11月06日(月)19時23分

 11月6日、安倍晋三首相と訪日中のトランプ米大統領は、首脳会談の後、共同記者会見を行った。写真は共同会見に臨む安倍首相(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

[東京 6日 ロイター] - 安倍晋三首相とトランプ米大統領は6日午後、東京の港区元赤坂の迎賓館で会談し、北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させるため、強い圧力をかけ続ける方針で一致した。

一方、貿易問題を巡っては温度差が垣間見え、トランプ氏が2国間の自由貿易協定(FTA)を持ち出すことはなかったものの、日本に米国製の武器輸入を増やすよう求めた。

<中国とロシアに働きかけ>

両首脳の会談は5回目で、今年9月にニューヨークで開いて以来。この日は昼食会に続いて会談した。安倍首相はその後の共同会見で、「北朝鮮の側から、政策を変えるから話し合いたいという状況を作っていくことが極めて重要。そうした考え方についてトランプ大統領と一致した」と発言。中国、ロシアを含む関係国に働きかけを行って、国際社会全体で北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていかなければならない」と述べた。

トランプ大統領も、「戦略的忍耐は終わった」と北朝鮮を強くけん制。「米国は日本国民と団結し、北の悪意に満ちた脅威に立ち向かっていく」と強調し、「歴史はこれまでも、強く自由な国が独裁政権に勝利を収めてきた」と語った。さらに日本には5万人以上、韓国には3万人以上の米軍が駐留しているとした上で、「安全保障と主権を守っていく」と述べた。

国際社会は米朝の間で偶発的な軍事衝突が起きることを懸念しているが、トランプ氏は「最終的にはすべてうまく行くことを期待している。すべての人のためになる結果を望んでいる。北朝鮮の国民にとっても」と語った。

会談に同席した西村康稔官房副長官によると、北朝鮮をテロ支援国家に再指定するかどうかについて、米側から検討状況の説明があったという。西村氏は具体的なやり取りは控えた。

<対日貿易赤字の削減を要求>

首脳会談では日米間の貿易も主要議題となった。トランプ氏はこの日午前に行われた日本の財界との会合でも、米国製の自動車が日本で売れないことなどを問題視。首脳会談後の共同会見で「互恵的な貿易関係を築いていきたい。平等で信頼できるアクセスが米国製品に必要であり、慢性的な貿易不均衡を是正しなければならない」と述べた。

これに対し安倍首相は、日本企業が米国での雇用創出に貢献していることを指摘。さらに「2国間の貿易だけでなく、アジア・太平洋に広がる貿易、投資にかかる高い基準づくりを主導していきたい」とし、麻生太郎副首相兼財務相とペンス米副大統領による日米経済対話に議論を委ねる考えを示した。

西村官房副長官によると、日本が警戒するFTAについては、トランプ氏が話題にすることはなかった。

<武器購入で「米国に雇用、日本が安全に」>

トランプ大統領は、日本が北朝鮮のミサイルを上空で迎撃できるようになるとして、米国製の武器調達を増やすことも要請した。貿易不均衡是正の一環とみられ、「F35は世界最高の戦闘機、さまざまなミサイルも製造している。米国に多くの雇用が生まれるし、日本が安全になる」と語った。

安倍首相は、「日本は防衛力を質的に、量的に拡充しなければなららない」と発言。F35Aや新型迎撃ミサイルのSM3ブロック2Aなどを米国から導入することを指摘した上で、「イージス艦の量、質を拡充していくうえで、米国からさらに購入していくことになるのだろう」とも述べた。

日本が北朝鮮の弾道ミサイルを打ち落とすことについては、「必要あるものについては迎撃をしていく」と説明した。日本は自国の領域に落下してくる恐れのある弾道ミサイルや、同盟国の米国など親密な他国に向かって飛ぶミサイルに限って迎撃することができる。

トランプ大統領は日本滞在中、天皇陛下と会見した。北朝鮮に拉致された日本人被害者本人や家族にも面会し、「北朝鮮はとんでもない不名誉な行為をした。私は安倍首相と力を合わせ、彼らが母国に戻れるよう尽力していきたい」と述べた。

トランプ氏は7日午前、韓国へ向かう。韓国はトランプ氏の訪問に先立ち、北朝鮮に独自制裁を課すことを決めた。日本も独自制裁を追加する方針で、新たに35の団体・個人の資産凍結を7日に決定する。

*内容を追加しました。

(梅川崇、スティーブ・ホーランド、久保信博 編集:田中志保)

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