ニュース速報
ビジネス

アングル:米雇用大幅下方修正と局長解任、データ信頼性やFRB景気判断力に不安

2025年08月04日(月)08時39分

8月1日、 5-6月の米雇用者数の大幅な下方修正と、それに続くトランプ大統領の労働統計局長解任命令を受け、投資家の間では米国の経済データの信頼性や、米連邦準備理事会(FRB)の景気判断力に対する不安が広がっている。写真は7月30日、ワシントンで記者会見するパウエルFRB議長(2025年 ロイター/Jonathan Ernst)

Davide Barbuscia

[ニューヨーク 1日 ロイター] - 5-6月の米雇用者数の大幅な下方修正と、それに続くトランプ大統領の労働統計局長解任命令を受け、投資家の間では米国の経済データの信頼性や、米連邦準備理事会(FRB)の景気判断力に対する不安が広がっている。

1日に発表された7月の雇用者数の伸びが7万3000人と予想外に低調だった上に、過去2カ月分の伸びは合計25万8000人も下方修正されたことで、FRBの政策対応が後手に回り、今後急いで利下げに動かざるを得なくなるのではないか、というのが投資家の見立てだ。

FRBは7月30日に終わった連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利据え置きを決めるとともに早期利下げを回避する姿勢を打ち出し、市場では9月の次回FOMCでの利下げ観測が後退した。

ところが雇用統計の発表で様相は一変。CMEグループのデータによると、金利先物が想定する9月利下げ確率は、7月31日時点の38%から81%前後まで跳ね上がった。

マニュライフ・ジョン・ハンコック・インベストメンツの共同チーフ投資ストラテジスト、マシュー・ミスキン氏は「雇用統計悪化を踏まえるとFRBの政策運営は難しさが増しつつある。大規模な下方修正はFRBの政策対応をガラリと変える存在で、次のFOMCは軌道修正を図ろうとする会合になると思う」と述べた。

さらに事態を複雑にしたのはトランプ氏のマッケンターファー労働統計局長解任命令だ。トランプ氏は具体的な根拠を示さずに「共和党と私を悪く見せるために雇用統計が操作された」と自身のソーシャルメディアで主張した。

フォリオビヨンドのチーフストラテジスト、ディーン・スミス氏は「まさに八つ当たりだ。労働統計局長をクビにしたからデータ収集・普及が改善するわけではないし、むしろ今後のデータの信頼性を損なうだろう」と警鐘を鳴らしている。

<崩れる前提>

労働省は、通常よりもずっと大きくなった5-6月雇用者の下方修正について直接の原因には言及しなかったが、速報段階以降に集まった企業や政府機関からの回答を加え、季節容認を再計算した結果の数字だと説明している。

一方シンプリファイ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、マイケル・グリーン氏は「米政府が雇用者の算定に不適切なモデルを用いているのは、残念ながら明らかだ。信頼できるデータがなければ、不適切な政策が生み出される」と懸念する。

FRBのパウエル議長は7月30日の会見で、労働市場はなお強固だとの認識を示していた。

しかしジャナス・ヘンダーソン・インベスターズのマルチ資産グローバル責任者兼ポートフォリオマネジャー、アダム・ヘッツ氏は「これらの数字が1、2カ月前に速報値として発表されていたなら、この夏全体の労働市場に関する話は著しく変わっていただろう」とノートに記した。

トランプ氏が主要貿易相手に適用する関税率は以前に懸念されていたほどの高さではないものの、依然として米国の物価情勢を悪化させ、経済活動を鈍らせると予想されている。

クリアブリッジ・インベストメンツで経済・市場戦略を統括するジェフ・シュルツェ氏は「新規雇用が失速気味のところに関税の逆風が見えている中で、数カ月中に雇用者数がマイナスに転じる可能性は大きい。それは景気後退懸念を想起させるのではないか」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米財務長官、アルゼンチン支援は「資金投入ではなく信

ワールド

アプライド、26年度売上高6億ドル下押し予想 米輸

ワールド

カナダ中銀が物価指標計測の見直し検討、最新動向適切

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高を好感 半導体関連
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中