ECB、利下げ余地縮小でも柔軟な対応必要=伊中銀総裁

5月30日、 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのパネッタ・イタリア中銀総裁(写真)は、ECBによる追加利下げの余地は縮小したものの、現実的かつ柔軟なアプローチを維持し、今後の政策決定は個別の状況に応じて行うべきとの認識を示した。伊ストレーザで2024年5月撮影(2025年 ロイター/Massimo Pinca)
By Valentina Za
[ローマ 30日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのパネッタ・イタリア中銀総裁は30日、ECBによる追加利下げの余地は縮小したものの、現実的かつ柔軟なアプローチを維持し、今後の政策決定は個別の状況に応じて行うべきとの認識を示した。
ECBの主要政策金利である中銀預金金利は、昨年6月に開始された金融緩和により4%から現在の2.25%まで低下した。6月5日の次回の理事会ではさらに2.0%への引き下げが予想されている。
パネッタ氏はローマでの講演で、「追加利下げの余地は当然ながら縮小している」と述べた。
「しかし、経済の見通しは依然として弱く、貿易摩擦が状況を悪化させる可能性もある」と指摘した。
「流動性の状況や、金融市場および信用市場から発せられるシグナルを考慮し、現実的かつ柔軟なアプローチを維持することが不可欠となる」との見解を示した。
また、イタリア中銀の年次報告書に言及し、ユーロ圏と米国の通商交渉の結果は依然として不透明だが、いずれにせよ両者間の緊張が経済に「重大な影響」を及ぼすことは確実だと述べた。
<暗号資産のリスク警告>
パネッタ氏は、銀行が暗号資産(仮想通貨)関連サービスを提供する際には、風評リスクに対する注意深い監視が必要と呼びかけた。万一損失が発生すれば顧客の信頼を損なう恐れがあると警告した。
銀行とデジタル資産関連業者の提携が増加している点に触れ、仮想通貨の世界と既存の伝統的な金融システムとの結びつきが強まっている現状に警鐘を鳴らした。
「仮想通貨の保有者がその特性を十分に理解しないまま、従来の銀行商品と混同する恐れがある。その結果、損失発生時には信用システム全体への信頼に悪影響を及ぼしかねない」と述べた。
さらに法定通貨を裏付け資産とするステーブルコインについて、外国の巨大IT企業が利用を推進した場合、従来の決済手段を脅かす存在になり得ると指摘。「適切な規制がなければ、決済手段としてのステーブルコインの適合性は、控えめに言っても疑問だ」と語った。
だだ、単に規制を課すだけでステーブルコインを含む仮想通貨の普及を抑制できると考えるのは短絡的との見解も示した。
技術変革に見合った対応が必要と強調し、ECBが推進する中銀デジタル通貨(CBDC)「デジタルユーロ」計画こそが「まさにこの必要性から生まれたものだ」と説明した。