ニュース速報
ビジネス

アングル:スマホアプリが主戦場、変わる米国の年末商戦買い物事情

2024年12月01日(日)08時06分

 11月28日、米国では今年、ブラックフライデー(感謝祭翌日の金曜日)商戦を待たず、スマートフォンやタブレット端末のアプリで一足先に買い物をする消費者が増えている。写真はアマゾン・プライムの配達車両。カリフォルニア州ゴールデングローブで2022年3月撮影(2024年 ロイター/Mike Blake)

Arriana McLymore

[ニューヨーク 28日 ロイター] - 米国では今年、ブラックフライデー(感謝祭翌日の金曜日)商戦を待たず、スマートフォンやタブレット端末のアプリで一足先に買い物をする消費者が増えている。小売企業側も数週間前から、テレビや無線スピーカーなどオンラインショッピング向けの値引きを実施し、消費者を取り込む準備を進めてきた。

ウォルマートやターゲットなど小売大手の実店舗は感謝祭当日が休業。一方、デジタル空間慣れした18歳から24歳の若者は、家族と過ごす感謝祭の休暇にソファーに座りながらモバイル端末で買い物をしそうだ。

小売各社が提供するアプリからの買い物は簡単で便利なため、ここ数年人気が高まっている。

セールスフォースの幹部カイラ・シュウォーツ氏は、これまで「消費者はスマホで商品を探すが、その後コンピューターに戻って買うというギャップが常に見られた」と言うが、そのギャップが縮まっている

小売企業が「グーグルペイ」や「アップルペイ」などを利用して決済手段を簡素化するとともに、常連顧客の料金請求や配送手段などを保存したり、顧客に合った商品をお勧めしたりと、モバイル端末アプリの利便性を向上させているからだ。

アドビ・アナリティクスによると、今年11と12月のモバイル端末経由の支出は1281億ドルと、過去最高だった前年から12.8%増加し、オンラインショッピングの53%を占める見通しだ。

モバイル端末経由の消費をけん引しているのはスマホでの買い物や価格比較に慣れているZ世代で、感謝祭で集まった時に家族にもそうした買い物方法を伝授している可能性が高いと、カーネギー・メロン大学・テッパー・スクール・オブ・ビジネスのミンキュン・キム助教は言う。

タリア・ルブランさん(33)は「10回のうち9回は」スマホかタブレットを使ってターゲットや百貨店のノードストロームのアプリで買い物をすると語る。今年の年末商戦には家族への贈り物に2000ドルを使う予定で、大半はアマゾン・ドット・コムのアプリで買うつもりだ。利便性に加え、アプリ独自の割り引きや特典も魅力だという。

ブラックフライデーに混雑した実店舗で長い行列に並ぶのを避けられるという利便性が、消費者をモバイル端末に走らせる大きな要因となっている。アドビによると、11月1─24日にオンラインで行われた買い物のうち、51.6%がモバイル端末経由。前年同期の49.5%から増えた。金額にすると前年同期比13.3%増の399億ドルだ。

サーフィン用品のブランド、ロキシーの幹部、ニュール・ゴーシエン・マーティン氏は、オンライン購入の60%がモバイル端末アプリ経由で、大半はメンバーになっている常連客によるものだと説明。アプリ経由の方が「平均購入額が大きく、コンバージョン率(サイト訪問者のうち、実際に購入する人の割合)も高い」と話した。

同社はここ数年、年末商戦シーズンにアプリのダウンロードを促すキャンペーンを行ってきたという。

モバイル端末による販売で先頭を行くのがアマゾンだ。同社は年末商戦に先駆け、対話型生成AI「Rufas(ルーファス)」を拡大するとともに、「SHEIN(シーイン)」やPDDホールディングス(HD)が運営する「Temu(テム)」など中国発の買い物アプリと競うため低価格ストアの「アマゾンホール」を立ち上げた。買い物客はアマゾンのアプリを介さなければアマゾンホールにアクセスできない。

コンサルティング会社CI&Tの幹部、メリッサ・ミンコウ氏はこの仕組みを見て分かる通り、消費者をモバイル端末に誘導する余地はまだ大きいと指摘。アマゾンで買い物をすることを「習慣」とする人が多いため、モバイル端末アプリ経由の消費も増えそうだと語った。

セールスフォースのシュウォーツ氏は、低価格商品だけでなく、高額商品をスマホから買う人も増えていると言う。小売業者が詳細な商品説明を載せたり、アプリやウェブサイトの機能を向上させたりと対応を強化しているからだ。

アマゾンやファッション通販MANGO(マンゴ)などは年末商戦前の数週間にサイトとアプリの容量を増やし、負荷試験を行うなど準備を行う見通しだ。

シュウォーツ氏は、オンラインショッピングの件数が増えているため「ブランドと小売業者にとって『モバイルファースト(モバイル最優先)』に投資することがますます重要になる」と明言した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

TikTok、米でサービス再開 トランプ氏は禁止法

ビジネス

トランプ氏、就任早々に暗号資産規制緩和の大統領令発

ワールド

ガザ停戦、ハマスが人質3人解放 イスラエルも90人

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明らかに【最新研究】
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 8
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    メーガン妃とヘンリー王子の「山火事見物」に大ブー…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 7
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中