ニュース速報
ビジネス

アングル:パリ五輪、企業の広告需要回復 デジタルの台頭鮮明に

2024年04月14日(日)07時47分

2024年7月のパリ五輪開幕が近づく中、米メディア企業NBCユニバーサル(NBCU)は9日、パリ五輪の広告枠の売上高が既に12億ドルに達し、五輪として過去最高額を更新する勢いだと発表した。写真はパリで3月撮影(2024年 ロイター/Benoit Tessier)

Sheila Dang

[9日 ロイター] - 2024年7月のパリ五輪開幕が近づく中、米メディア企業NBCユニバーサル(NBCU)は9日、パリ五輪の広告枠の売上高が既に12億ドルに達し、五輪として過去最高額を更新する勢いだと発表した。

新型コロナウイルスのパンデミック後初めての開催となるパリ五輪は、ファンが会場を埋め尽くす見通しで、スポンサーの大手企業が五輪に対する関心を取り戻している様子がうかがえる。

NBCUは76億5000万ドルという世界最高額で契約を更新し、五輪の2032年までの放映権を手に入れた。五輪・パラリンピックセールス担当社長のダン・ロビンガー氏によると、国際オリンピック委員会(IOC)のスポンサーから入る広告収入は現時点で21年東京五輪を18%上回った。

このNBCUの発表は、五輪広告枠の販売の回復ぶりが明らかにした。同社元幹部や広告業界関係者によると、近年の五輪でIOCのスポンサーはNBCUに払う広告費を減らしていた。

ビザやトヨタ自動車、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)といったIOCスポンサーは、知名度抜群の五輪マークをマーケティング素材に使用する権利を得るために推定1億ドル余りを支払っている。

ロビンガー氏によると、パリ五輪の広告枠販売が上向いたのは、パンデミック後初めて全ての観客が会場に入れるようになったことや、放映が米視聴者にとってより好ましい時間帯になったことが理由。過去3回の大会は、いずれも開催地がアジアだった。

視聴者、特に若者の間でオンラインやソーシャルメディアを通じてコンテンツを消費する傾向が強まり、NBCUもこうした変化に対応すべく手を打っている。先月には夏季五輪初の試みとしてパリ大会の全競技を同社のストリーミングサービス「ピーコック」で配信すると発表した。

広告主は初めて営業担当者ではなく、自動化技術経由で広告を購入できるようになり、X(旧ツイッター)や動画共有サイトのスナップチャットにビデオクリップを投稿する契約も締結した。ロビンガー氏によると、UNBCはパリ五輪のデジタル広告収入が既に過去の五輪全てを超えている。

<強まる逆風>

NBCUの元幹部や、広告販売に詳しい別の関係筋によると、過去の五輪ではIOCのトップスポンサーが広告費を減らし、NBCUがその差額を埋めるために販売対象をパートナー以外の企業にも広げたこともあった。

この元幹部によると、東京五輪と22年北京冬季五輪では、NBCUは売上高目標を達成するために販売先の広告主数を約3倍に拡大。顧客の獲得は「ますます難しくなっている」という。

NBCUは20年3月、東京夏季五輪向けに12億5000万ドルの広告枠を販売したと発表した。しかし、パンデミックの影響で大会が翌年に延期された後の広告枠販売見通しに関する発表は歯切れが悪かった。

NBCUの元幹部によると、P&Gは以前、五輪でNBCUに数千万ドルの広告費を支払っていたが、徐々に支出額を50%ほど減らした。

IOCのスポンサーである半導体大手インテルとタイヤメーカーのブリヂストンは、パリ五輪でテレビ広告を見送り、デジタルプラットフォームに軸足を置くと明かした。ブリヂストンの最高マーケティング責任者、サラ・コレア氏は「大々的にテレビで広告を打つ時代は終わった」と言い切った。

ブリヂストンは自社のゴム技術を使ってパラリンピック選手の車椅子用タイヤやランニングブレードのゴム底を支援する様子を紹介する動画を撮影し、ユーチューブやフェイスブック、インスタグラムに投稿した。

インテルは、デジタルやソーシャルメディアに加え、屋外メディアでの広告も模索している。

コストを抑えたい企業にとって、デジタル広告は魅力的だ。広告会社S4キャピタルとWPPの創設者であるマーティン・ソレル氏は「デジタルは絶対的なコストが安い。追跡が容易で、効果の測定も簡単だ」と話す。

ビザの最高マーケティング責任者、フランク・クーパー氏も、スポーツ中継におけるテレビの力を引き続き信じているとしつつ「ファン、特に比較的若いファンを引きつけるのは、ソーシャルメディアだ」と指摘する。

トヨタは開会式や閉会式でテレビ広告を流すと出すとともに、セレブやアスリートを起用し、従来型のスポーツファンと異なる視聴者も取り込む戦略だ。トヨタのスポンサーシップ責任者、デドラ・デリリ氏は「伝統的な五輪のマーケティング基盤を拡大し、インフルエンサーを通じて人々とつながる興味深い手法だ」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米財務長官、中国副首相と15─16日にパリで会談 

ワールド

イランの加州攻撃警告は未確認情報、脅威存在せず=米

ビジネス

トルコ中銀、政策金利37%に据え置き 燃料価格上昇

ワールド

紅海の米空母で火災発生、2人負傷 戦闘とは関連せず
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 4
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    ハメネイ師死亡が引き起こす「影の戦争」――中東外で…
  • 9
    ヘンリー王子夫妻が4月に豪州訪問へ、メーガン妃は女…
  • 10
    ノルウェーに続いてカナダでも...またしても在外米領…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中