賃上げは「不確実性高い」、早期機運醸成でもばらつき=日銀支店長会議
日銀が11日に開いた支店長会議では、賃金について、地方でも昨年よりいくぶん早いタイミングで賃上げ機運が醸成されつつあるものの「賃上げの広がりや程度等については不確実性が高い」との報告が多く出されていたことが明らかになった。資料写真、日銀本店外観、2009年3月撮影(2024年 ロイター/Yuriko Nakao)
Takahiko Wada Takaya Yamaguchi
[東京 11日 ロイター] - 日銀が11日に開いた支店長会議では、賃金について、一部の大企業が昨年並みかそれ以上の賃上げ方針を表明する中、地方でも昨年よりいくぶん早く賃上げ機運が醸成されつつあるものの「賃上げの広がりや程度等については不確実性が高い」との報告が多く出された。
一方、同日公表された地域経済報告(さくらリポート)では、能登半島地震の影響は反映されなかった。植田和男総裁は支店長会議で「地域の金融機能の安定維持に努めつつ、地域経済への影響について今後よくみていきたい」と述べた。
<賃上げ、中小企業中心に慎重姿勢>
2%物価目標の実現に向け、日銀は賃金と物価の好循環への確度が十分に高まるか注視している。11日の支店長会議は、各地の支店長が賃上げ動向や価格転嫁についてどのような報告をするかが最大の焦点となっていた。
支店長会議では、前回と同じく競合他社の動きを見極めたいとして現時点では賃上げ率などを固めきれていない先が多いほか、「中小企業を中心に、収益面の制約から慎重さを崩さない先も少なくない」との指摘が出た。
記者会見した広島鉄也・名古屋支店長は、好調な企業収益を背景に「人手確保のための賃上げに前向きな声が聞かれ始めている」とする一方、「中小企業の中には業況の改善が鈍い先もあり、今年の春闘の行方は不確実性がある」と述べた。中島健至・大阪支店長(理事)は域内企業の賃上げ姿勢について、大企業では積極的な声がある一方、中小企業の間では「ばらつきが大きい」と話した。
大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、今回の支店長会議について、日銀が大企業の賃上げ方針を前向きに捉える一方で、中小企業の動向はもう少し見たいとの雰囲気が伝わってきたと話す。岩下氏は3―4月にならないと中小企業は賃上げを決めてこないと指摘、日銀は4月にマイナス金利を解除すると予想している。
<能登地震の影響「具体的に言及できる段階にない」>
支店長会議のもう1つの焦点は能登半島地震の影響が広範に出た北陸地方の景況感だったが、同日公表されたさくらリポートでは地震の影響は盛り込まれなかった。全9地域中、東海と九州・沖縄の2地域で判断を引き上げる一方、近畿は判断を引き下げた。
吉浜久悦・金沢支店長は会見で、現状は救助活動や復旧作業の最中であり、経済への影響を「具体的に言及できる段階にはない」とした。金融機関に対し、預金払い戻しなどで柔軟に対応するよう要請しており「今の枠組みの中で全力を尽くしていく」と述べた。
近畿の判断引き下げの主因は、低調な中国やアジアNIES(新興工業経済地域)向けの輸出。中島大阪支店長は、一部自動車メーカーの生産停止や震災の影響を念頭に「今後注意深く点検していく」と語った。
(和田崇彦、山口貴也)