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ECB、バランスシート少なめにすべき=シュナーベル専務理事

2023年12月05日(火)20時10分

12月5日、 欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル専務理事(写真)は、ロイターとのインタビューに応じ、ECBはバランスシートを少なめに維持すべきだと主張、市中銀行が資金を必要とする場合はECBから資金を借り入れることが望ましいと述べた。フランクフルトで2019年11月撮影(2023年 ロイター/Ralph Orlowski)

Balazs Koranyi

[フランクフルト 5日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル専務理事は、ロイターとのインタビューに応じ、ECBはバランスシートを少なめに維持すべきだと主張した。市中銀行が資金を必要とする場合はECBから資金を借り入れることが望ましいと述べた。

シュナーベル氏は、市中銀行がECBからいくら借り入れるか選択できるシステムが望ましいと主張。これに対し、ECBのレーン専務理事は、市中銀行が必要とする資金の少なくとも一部を債券買い入れや長期融資の形で供与すべきと主張している。

シュナーベル氏はユーロ圏は加盟国によって経済力や銀行システムが異なるため、「需要主導型」のアプローチが適切だと指摘。そうしたアプローチではECBのバランシートの規模を制限できる可能性も高まるとの見方を示した。

ただ「異なる手段を組み合わせることが合理的な可能性もある」とし、妥協点を模索する可能性も示した。その場合は長期の融資が資産買い入れよりも好ましいとした。長期融資は幅広い銀行に届くが、債券購入による資金供給は一部の大手行に集中する傾向があると説明した。

ECBの債券買い入れに依存することが多い南欧の当局者はレーン氏の主張に同調する可能性が高いとみられるが、資金力が豊富なユーロ圏北部の当局者はシュナーベル氏の主張を支持するとみられる。

ECBの金融政策担当スタッフは討議資料で、ECBは債券の購入を再開する前に保有残高を2026年半ばまでに現在の半分の1兆5000億ユーロ(1兆6300億ドル)まで縮小すべきとの見解を示した。

銀行はECBが債券購入を通じて創出した準備金のような「非借り入れ準備金」を持っている場合の方が、より多くの信用供与を行うことが明らかになったとしている。またECBは多すぎる債券を保有する方が全て処分するよりも好ましいとした。

これに対しシュナーベル氏は、銀行の需要をECBが正確に把握することはできないとして、ECBではなく銀行に選択させるべきとの立場を示した。

シュナーベル氏は、ECBのバランスシートの最低規模が、紙幣需要や政府預金などの外生要因だけで、世界的な金融危機前の3倍前後になるとの見方も示した。

ECBのバランスシートは現在7兆ユーロ、金融危機前は1兆ユーロ強だった。

しかしこの議論が重要になるのは「遠い将来」のことだと指摘。ECBはいかなる状況下でもバランスシートを縮小する必要があり、最終的にはバランスシートの規模は現在より「はるかに小さく」なるだろうと述べた。

銀行への資金供給については米連邦準備理事会(FRB)のように流動性を供給して金融市場金利の「下限」を維持する方法と、イングランド銀行(英中銀)のように「上限」金利で銀行に融資するやり方がある。

シュナーベル氏は英中銀方式を支持しており、長期資金の貸し出しで新たに入札を行う場合は、過去10年間のような補助金付き金利ではなく市場金利で供給する必要があるとの考えを示した。

ロイター
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