ニュース速報
ビジネス
アングル:解散・総選挙は買い材料、過去は高確率で日本株上昇

日本株がバブル後高値の水準まで上昇する中、一段高を目指す材料として解散・総選挙が注目されている。写真は東京証券取引所で2020年10月撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)
平田紀之
[東京 30日 ロイター] - 日本株がバブル後高値の水準まで上昇する中、一段高を目指す材料として解散・総選挙が注目されている。過去のケースでは、高い確率で日本株が上昇したためだ。解散の有無は岸田文雄首相の胸の中だが、市場の好反応を得るには、追い込まれ解散の雰囲気を作らず、政策の継続性を示せるかが鍵となる。
<日経平均は8回で「全勝」>
2000年以降の解散は8回あり、日経平均は全勝、TOPIXは7回株高となっている。解散前日終値から投開票日直前の終値までの平均上昇率は、それぞれ5.2%、4.1%。29日終値でみれば、日経平均は3万2500円が視野に入る。
「過去の例から、与党勝利での株高は刷り込まれている」と、マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは指摘する。永田町では解散・総選挙の思惑に浮足立っているが、株式市場ではむしろ歓迎ムードすら漂う。過去の例では株高につながった「実績」があるためだ。
「海外勢は、国内の投資家より選挙に敏感」と、りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一チーフ・ストラテジストは話す。5月に入って海外勢の先物買いは増加基調にあり、「解散を織り込む動きも入っていそうだ」(外資系証券のストラテジスト)との見方も出ている。
<大相場は「変化」がテーマ>
過去の大相場では、選挙で「変化」の気運が高まったという共通点がある。2005年は郵政民営化、09年は政権交代、12年は政権交代とアベノミクスが、それぞれテーマになった。とりわけ05年と12年は、選挙後も株高基調が継続した。
17年の選挙では、日経平均が16連騰する場面があった。世界景気の回復が意識される中で、14年と同様にアベノミクスの「継続」が意識され、世界の景気敏感株として海外勢の関心が集まった。
「変化」はキーポイントだが、政治の安定が揺らいでしまうと、市場の評価は高まりにくい。2003年の衆院選では年初来高値をつける場面もあったが、野党・民主党が勢いを増す中で海外勢は買いを手控え、米株安などが重しになってTOPIXは唯一の「黒星」を付けた。
<「継続」型の株高に期待>
今回は大相場となった05年、09年、12年のような「変化」の気運が高まっているわけではない。しかし、足元の経済や市場環境は株価にはポジティブだとして、「継続」型での株高を期待する声が多い。
岸田政権下では、海外の半導体企業の誘致のほか、中国依存からの脱却、貯蓄から投資、東証による企業改革などの取り組みがあったとし、「最初こそ迷走したが、直ぐに修正した。悪いことは起きておらず、路線を変えない方が市場にはフレンドリー」だと、マネックスの広木氏はみる。
「自民党大勝なら、外国人はより買ってくるだろう」と、いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は予想。持続的な賃上げを担保するような政策があれば株価にプラスだとして、3万3000円程度の株高もあり得るとみている。
一方、防衛費増額や少子化対策の財源確保として増税を打ち出すようなら、株価にマイナスとの声もある。「改革志向の強い日本維新の会が野党第一党に躍進するほど勢い付くようなら、増税議論が浮上しやすい」(りそなAMの黒瀬氏)という。
岸田首相が総理秘書からの更迭を決めた長男の問題も、解散イコール株高のシナリオに水を差しかねない。野党が批判を強める中、国内証券のストラテジストは「追い込まれ解散のイメージが着きかねない」と指摘する。
(平田紀之 編集:伊賀大記)