ニュース速報

ビジネス

大企業製造業の景況感、原材料高で3期連続悪化 非製造業は改善=9月日銀短観

2022年10月03日(月)10時43分

 10月3日、日銀が発表した9月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス8と、3期連続で悪化した。2021年3月以来の低水準となった。東京都で2020年5月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 3日 ロイター] - 日銀が3日発表した9月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス8と、3期連続で悪化した。幅広い業種で原材料コスト高が負担となっている。一方、非製造業DIはプラス14と、2期連続で改善。感染症対策の行動制限が緩和されたことが対面型サービスの業況を上向かせた。

大企業・製造業の業況判断DIはロイターがまとめた予測中央値(プラス11)を下回り、2021年3月以来の低水準となった。「石油・石炭製品」から市況下落に伴う在庫評価損、「非鉄金属」から電力コスト上昇による採算悪化などが聞かれた。

一方、「自動車」はマイナス15と、前回から4ポイント改善した。中国・上海のロックダウン(都市封鎖)解消に伴う部材供給難の解消や、円安による収益増などの指摘が聞かれたという。

先行き判断DIはプラス9と、小幅な改善を見込む。改善を予想した業種からは価格転嫁の進展を理由に上げられていた。

大企業・非製造業の業況判断DIは19年12月以来の高水準。ロイターがまとめた予測中央値(プラス13)を上回った。行動制限の緩和を背景に「不動産」、「運輸・郵便」、「宿泊・飲食サービス」などが改善した。

先行き判断DIはプラス11と、3ポイントの悪化を見込む。仕入れコストの上昇や経済の先行き不透明感などが懸念材料となっている。

<想定為替レートは円安方向に修正>

事業計画の前提となっている想定為替レート(全規模・全産業)は、2022年度通期で1ドル=125.71円と、前回6月調査から6.7円程度円安方向に修正された。円安進行に対しては、企業から業績面で為替差益の話が出ており、日銀幹部は「プラスの声の方が多かった」と述べた。

大規模・製造業の販売価格判断DI(「上昇」-「下落」)はプラス36と、前回から2ポイント上昇した。仕入価格判断DI(同)前回から横ばいのプラス65。水準は1980年5月以来の高水準で、コスト増に対する負担感が根強い。

設備投資額(全規模・全産業)が、過去平均の修正率を上回る上方修正となり、前年度比16.4%増となった。9月時点での伸び率は1983年以来で過去最高。企業のしっかりした設備投資意欲が引き続き示された。

企業の予想インフレ率は上向き、短期のみならず中長期にも波及している。企業の物価見通しは1年後が前年比プラス2.6%、3年後が同プラス2.1%、5年後は同プラス2.0%で、いずれも過去最高となった。5年後の見通しが2%に達したのは初めて。

専門家からは「コストプッシュ型の物価上昇が手前の年を中心に想定されているものとみられ、異次元緩和修正には直結してこない」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)との指摘が出ていた。

今回の短観の調査期間は8月29日から9月30日。回答基準日は9月12日で、回答基準日までで7割台半ばが回答した。

(杉山健太郎)

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中