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日銀総裁会見のポイント:ワクチン効果で内需押し上げか、日米物価格差も関心

2021年06月18日(金)14時20分

18日午後3時半から予定されている黒田東彦日銀総裁の会見では、足元で進んできた新型コロナワクチン接種が日本経済にどの程度のプラス効果を及ぼすと見ているのかに大きな注目が集まりそうだ。写真は2017年6月、都内の日銀本店前で撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

田巻一彦

[東京 18日 ロイター] - 18日午後3時半から予定されている黒田東彦日銀総裁の会見では、足元で進んできた新型コロナワクチン接種が日本経済にどの程度のプラス効果を及ぼすと見ているのかに大きな注目が集まりそうだ。もし、低迷してきた内需の押し上げ効果が強いとの判断が示されれば、7月に開催される次回の金融政策決定会合で示される国内総生産(GDP)見通しが上方修正される可能性が出てくる。

一方、インフレ懸念が浮上する米経済とは対照的に、日本の消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)はゼロ%をはさんだ動きが続き、期待インフレ率も低迷したままだ。日本の物価上昇率が他の主要7カ国(G7)と比べて低い理由や、上昇に転じるきっかけについて、黒田総裁が言及すれば注目されそうだ。

1.日本経済に対するワクチン効果の波及について

・ワクチン接種回数が17日現在で2800万回を超え、7月中には3600万人の高齢者(65歳以上)への2回接種が大幅に進展する見通しとなっている。この「接種加速化」が対面型サービスの回復を促し、内需の持ち直しにつながることになるのか、黒田総裁の見通しに関心が集まっている。

・ワクチン接種が先行している高齢者の行動が変容し、夏場には旅行などのレジャーに繰り出すとの予測も民間シンクタンクから出ている。この「シニア消費」活発化が個人消費反転のきっかけになるのかどうか。黒田総裁の分析が示されれば、シニア消費への注目度も上がりそうだ。

・伸びる外需と低迷する内需の構図に変化が出れば、7─9月期以降のGDP伸び率が上振れし、7月に公表される展望リポートで示される政策委員会メンバーの成長率見通しが上方修正される可能性も出てくる。黒田総裁は慎重な発言に終始する可能性があるが、何らかのヒントが提示されれば、市場が材料視する可能性がある。

2.日米間で対照的な物価動向と為替への影響

・米国の5月CPI(総合)は前年同月比プラス5.0%だったのに対し、日本の5月コアCPIは同0.1%にとどまった。この対照的な日米のデータを形成した要因は何か。黒田総裁は、日本の携帯電話料金値下げなどの要因に言及するとみられるが、それ以外の要因に言及すれば、市場の思惑を呼びそうだ。

・為替市場の一部では、低迷する日本の物価に注目し、デフレ的色彩が濃いことを理由に円高予想の声が上がっている。一方、米長期金利の上昇を見て円安予想に傾く市場関係者も多い中、物価低迷と為替の関係に黒田総裁が言及すれば、海外勢の関心度が高まりそうだ。  

3.気候変動と金融政策

・世界的に気候変動問題と金融政策との関係に注目が集まりつつある中で、日銀も「中長期的に経済・物価・金融情勢に極めて大きな影響を与えうる」と指摘した。新たに導入を打ち出した気候変動に対応した投融資をバックファイナンスする資金供給とは、具体的にどのようなスキームとなるイメージなのか。内外の金融関係者から注目されそうだ。

4.23年に日銀は正常化へ「助走」できるのか

・16日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによるドットチャートの分布をみると、2023年に2度の利上げを見込む予想が多数を占めた。BOJウォッチャーの中には、23年が日銀にとって超緩和政策を修正する「絶好」のチャンスとの声がある。「粘り強く」を繰り返して超緩和政策の継続を強調してきた黒田総裁が、23年の金融・経済情勢について、どのような展望を示すのか。きょうの会見の大きな見どころの1つと言えそうだ。

ロイター
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