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アングル:地銀の政策保有株、株高で収益を支援 削減不要論も

2021年04月23日(金)16時13分

 4月23日、株高の流れを受け、取引関係強化などのために地方銀行が持ち続けている「政策保有株」が収益を支える役目を果たしている。都内の商業施設で8日撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

和田崇彦

[東京 23日 ロイター] - 株高の流れを受け、取引関係強化などのために地方銀行が持ち続けている「政策保有株」が収益を支える役目を果たしている。古くから保有してきた銘柄の評価益が拡大。保有株の売却益をシステム投資に活用するケースも出ている。ガバナンスの透明性向上の観点から、金融庁は上場企業に政策保有株の売却を求めてきたが、地域社会での役割や厳しい収益環境を重視し、地銀については売却を急ぐ必要はないとの声が庁内で出ている。

<日本特有の商慣習> 

政策保有株は、自社と親密な企業が保有すれば経営陣の経営の自由度が高まりやすく、買収防衛策にもなる半面、一般株主の声が経営に届きにくくなるなどのデメリットも指摘され、「日本特有の商慣習」だとして海外投資家などから批判されてきた。

金融庁が旗振り役となり、上場企業の政策保有株の削減が進められてきた。転機になったのは15年のコーポレートガバナンス・コード(上場企業の統治指針)だ。政策保有株について、保有する経済合理性の検証と説明を求めたことで「銀行も事業会社も意識が変わり、理由もなしに保有しているのは良くないとの意識が高まった」(SBI証券の鮫島豊喜シニアアナリスト)という。その結果、株式の主体別保有比率で1995年に30%以上だった銀行や生損保などの金融機関の保有比率は低下傾向となり、19年度は7.7%となった。

<京都銀は巨額の配当収入、静岡銀はシステム経費に活用>

地方銀行の中で、歴史的な経緯から政策保有株が突出して多いのが京都銀行だ。任天堂、日本電産、京セラといった、京都発祥で世界的企業に成長した企業を立ち上げ当初から投融資で支援してきた。

京都銀が保有する株式の含み益は20年12月末時点で9952億円と、1兆円の大台に迫る。大半がこうした政策保有株とみられる。

20年度第3四半期決算では、貸付と有価証券投資から得られる資金運用収益が626億6400万円となったが、このうち政策保有株を含む有価証券からの利息配当収入は281億5500万円で約半分を占めた。

京都銀が株式を保有する任天堂は2月、20年度期末配当の増額を発表済み。「京都銀の配当収入はさらに増えるだろう」(アナリスト)との声が出ている。 

政策保有株を順次削減する中で、売却益をシステム投資に回しているのが静岡銀行だ。静岡銀の政策保有株の時価は20年12月末時点で4112億円。

静岡銀は今年1月、次世代システムに移行した。移行に伴う償却負担が続くが、20年度にかかる費用44億円と稼動に伴う税金負担24億円の合計68億円を株式売却益で賄う。償却負担が最も大きくなる21年度も、引き続き株式の売却益で賄う方針だ。

<金融庁、地銀保有に「理解」> 

金融庁は企業間の政策株持ち合いがなお残っていることを問題視している。ただ、金融機関については「メガバンクや生保は縮減していくべきだが、地銀は分けて考えるべきだ」との声が出ている。

特に地銀については、無理に保有株の解消を進める必要はないとの指摘が出ている。地域経済の活性化に重要な役割を担っているとの認識で、「低金利で資金運用が難しくなっている時期に、貴重な運用先を奪う必要はない」との声も聞かれる。

<東証新市場、政策保有株は流通株とせず>

株高は政策保有株の評価益を押し上げてきたが、株価が反転下落すればリスク要因ともなる。日銀は20日に公表した金融システムリポートで、海外投資ファンドと日本の金融機関の投資先が重複するケースが増えていると指摘。相場急変時に海外のファンドが日本株の売却を急げば、政策保有株を多く保有している金融機関にも影響が及ぶと指摘した。 

地銀各行は緩やかに政策保有株を減らしていく方針を掲げている。足元では、東京証券取引所の新市場区分への移行も意識されている。

新市場区分では、「プライム市場」であれば「流通株比率35%以上」が上場基準の1つになるが、東証は政策保有株を流通株に含めないとしている。地銀関係者からは「収益が出しづらい時期に、保有株の恩恵に浸れるところはうらやましい限りだが、新市場移行を考えれば保有株は増やしづらい」との声が漏れる。

(和田崇彦 編集:石田仁志)

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